生活困窮で「生活保護」、しかも「要介護」になったら、どうする?
前出の『令和4年度被保護者調査』によると、生活保護を受けている103万人の65歳以上のうち、年金支給がそもそもゼロ円、つまり無年金の人は30万人強にものぼります。
【生活保護を受ける年金受給者「月年金額」の分布】
年金支給なし:304,579人
1万円未満:36,560人
1万円台:87,727人
2万円台:107,585人
3万円台:115,668人
4万円台:97,090人
5万円台:75,789人
6万円台:76,520人
7万円台:51,282人
8万円台:35,811人
9万円台:21,302人
10万円以上:27,995人
仮に75歳で東京都23区に住んでいる、無年金の男性だとすると、東京23区で生きていくための最低生活費にあたる「生活扶助基準額」は7万1,900円、最低家賃にあたる「住宅扶助基準額」は5万3,700円で、合計の生活保護費は月12万5,600円。この金額が毎月支給される可能性があります。ちなみに実際の家賃のほうが低い場合は、実際の家賃額が支給されます。
現役時代の事情はさまざま。年金保険料をきちんと納めることができなかった……そんな事情を抱える人もいるでしょう。困窮する高齢者にとって、生活保護は最後の救いです。
そんな生活保護ですが、高齢者であれば働きたくても働けず、さらには要介護の認定を受けるというケースも。通常、要介護となればデイサービスなどの介護サービスを受けて、生活の質を高めることができますが……。
――生活保護を受けている身。それで介護してもらうなんて……そんな贅沢、できるわけない
そう悲観するしかないのでしょうか。結論からいえば、生活保護受給者でも介護保険の「第1号被保険者」として、デイサービスなどの介護保険サービスを利用することができます。生活保護の受給の有無が問題になることはないのです。
介護保険の被保険者は65歳以上は「第1号被保険者」となり、要支援・要介護認定を受けたときに介護サービスを受けることができます。介護保険料の納付が必須ではありますが、生活保護受給者は「生活扶助」に保険料分=介護扶助がプラスされ、実質的な負担はありません。ちなみに保険料は基本的に天引きされます。実際に介護扶助を受けている生活保護受給者は43万人ほど(2023年9月)。そのうち、居宅介護サービスを受けている生活保護受給者は30万人、介護予防を受けている生活保護受給者は9万人ほどいます。
介護扶助を受ける場合は、居住地の福祉事務所や社会福祉課に申請。認められれば、居宅介護サービスや福祉用世の貸与、移送などのサービスを受けられるようになります。また施設への入居も可能なので、自宅での生活が困難になった場合なども安心です。
ただし、ケアマネジャーが作成したケアプランが認められたら自己負担額分の負担が免除される仕組みなので、利用できるサービスは限定されます。本人の希望通りの介護が受けられるわけではないので注意が必要です。
いずれにせよ、生活保護を受けていても、介護保険サービスを利用することはできるので安心。まずは地域の窓口に相談をするのが第一歩です。
[参考資料]