子どもには良い教育を受けさせたいと、熱心になる家庭も多いのではないでしょうか。世帯年収が高くなるほど教育にかける金額も高くなる傾向にあり、なかには幼少期からの早期教育に力を入れている家庭もあります。本稿では、ファイナンシャルプランナーの栗山美希氏のもとに相談に訪れた世帯年収1,000万円の家庭を例に挙げ、子どもの教育費について考えます。
5歳の息子を“毎日”習い事に。月謝は10万円…「早期教育」に熱中する年収1,000万円・41歳夫婦の〈重大な見落とし〉とは?【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

子育てが落ち着いてからでは老後資金の準備が間に合わない

たしかにBさんが働き始めることで世帯収入が増えるため、小学校から大学まで私立に通わせることは可能になりそうです。しかし、教育費はすべて貯蓄から捻出する計画になっており、将来に向けた資産運用ができていませんでした。子どもの教育費ばかりに目を奪われ、自分たちの老後のことをまったく考慮していなかったのです。 

 

子どもが大学を卒業して数年後には、Aさんは定年退職を迎え、再雇用で働き続けたとしても収入は現役時代に比べガクッと減ってしまいます。現在41歳のAさんには、子育てが落ち着いてから自分たちの老後のためのお金を貯める時間がほとんど残されていません。 

 

実際、Aさん世帯の老後までのライフプランをシミュレーションしてみたところ、子どもの教育費の準備はできたとしても、Aさんが68歳の時点で家計が赤字に陥ることがわかりました。収入があるうちは足元の家計がマイナスになっていなければ生活ができていると感じてしまうものですが、定年退職等で収入が減ることになる老後の生活まで想像して、対策を打つ必要がありそうです。 

 

 結果としてAさんの家庭では小学校からではなく、中学校から私立に進学させることに。それによって生まれる余裕資金を資産運用に回し、老後破綻を避けられるようなライフプランを組み直すことにしました。  

 

子どもの教育にはいくらでもかけてやりたいと考えるのが親心というものでしょう。しかし、子どもの可能性や将来の選択肢を増やすために教育に力を入れても、早い段階で自分たちの生活が破綻してしまえば子どもに迷惑をかけることになり、本末転倒です。

 

とくに近年では結婚・出産の年齢が上昇してきていることもあり、子育てが落ち着いた後からでは老後資金の準備が間に合わない世帯も増えています。教育費の予算計画を組む際には、自分たちの老後のことも視野に入れておくことを忘れてはなりません。