そもそも「土地値」とはなにか?
アパートなどの投資用不動産物件の価格には、建物の価格と土地の価格とが含まれています。たとえば、5,000万円で販売されているアパートの場合、「建物価格は2,000万円、土地価格は3,000万円」といった具合に分けることができます。
上記の場合なら、3,000万円の土地の価格を「土地値」といいます。
土地の価格には、さまざまな評価方法があることをご存じの方もいらっしゃると思いますが、ここでの「土地値」とは、実際に売買されるときの相場価格=実勢価格を基準に考えます。
Webサイトなどで公開されている不動産販売情報には「アパート5,000万円」など、全体の価格しか表記されておらず、「建物2,000万円、土地3,000万円」といった内訳は書かれてはいません。そのため、多くの投資家は土地値について意識しないのですが、実は不動産投資にあたって「価格に含まれる土地値の割合」は、非常に重要なのです。
土地値割合で変わる出口の売却価値
例をあげて考えてみましょう。
「販売価格5,000万円、利回り10%」という同じ条件で、Aアパート・Bアパートの2つのアパートが売られているとします。ただし、両者の販売価格に含まれる土地と建物の価格は、それぞれ下記のように異なります。
両者の購入後の将来価値は、下記の図表2のように変化していきます。
建物の価値は時間の経過につれて下がっていきますが、土地の価値は下がりません(経済情勢が一定であることを前提に)。そのため、不動産の価格は、将来的に土地値に収束していきます。
つまり、Aアパートの価値は最終的には1,000万円になる一方、Bアパートの価値は4,500万円になるということです。
言い換えると、購入時に土地値の割合が大ければ大きいほど、将来の売却出口において、価格が下がりにくいということです。
上記の説明で、投資不動産は、土地値(に近い価格)で買うことが重要だということがおわかりいただけたのではないしょうか。
なお、土地値がいくらなのかは、販売会社の担当者に聞けば教えてくれますが、必ず自分でも周辺相場などを調べ、実勢価格を把握することが重要です。
数値シミュレーション例
たとえば、下記のような想定収益で、販売価格5,000万円のアパートを、金利2%、期間20年のフルローンで購入したとします。私たちはこれくらいの投資目線で購入してますので、参考にしてみてください。
家賃収入から経費支出を除き、さらに融資を返済したあとの年間キャッシュフローは305万円ですが、わかりやすく年間300万円としましょう。
このアパートの販売価格がほぼ土地値に近いとすると、投資資産・負債の残高は、下記のように推移します。
10年後には、借入残高は2,000万円減って3,000万円となります。
土地値は変わらずに約5,000万円なので、資産5,000万円-負債3,000円で、約2,000万円の含み益となります。
それに加えて、年間300万円×10年分で3,000万円のキャッシュフローが得られることになります。
20年後には、負債はゼロになり、土地値の約5,000万円が丸々資産として残ります。それに加えて、6,000万円のキャッシュフローが得られることになります。
このように、キャッシュフローに、資産の含み益を加えた合計額が、投資の成果である純資産になるのです。
ちなみに銀行も、融資審査において「投資の含み損益」の状態を非常に重視します。
仮に、この物件の土地値が1,000万円だとしたら、借入残高が1,000万円に減る17年ごろまで、ずっと「含み損」の状態が続くことになります。すると、新規の融資を受けることは難しく、他から資金を調達してこない限り、新しい投資もできないことになります。
「土地値で買えるアパート」をどうやって探すか
では、土地値(に近い価格)で買うために、具体的にどんなアパートを探せばいいのでしょうか。ポイントは3つあります。
(1)政令指定都市および県庁所在地で、中心部からはずれた周辺エリア
あくまで満室経営できることが前提なので、政令指定都市および県庁所在地のような、将来にわたる需要の見込める地域で探します。ただし、利回りの低い中心都市部ではなく、周辺部に絞ることがポイントです。
(2)築15年~25年程度の中古アパート
新築や築浅の物件は、建物価格が高い=土地割合が低くなります。また、RCのマンションなども建物価格は高くなります。築20年くらいの木造アパートがちょうどいいバランスで狙い目です。
(3)価格3,000万~7,000万円程度の小さめのアパート
この位の価格帯だと銀行の支店内で決済ができるため、融資を受けやすくなります。先に述べたように、土地割合が高い物件は、銀行内で用いられる積算評価という評価方法においても高い評価が出やすいので、融資を受けやすくなります。
私たちが手掛けてきた投資事例
多少不動産投資の勉強をしたことのある方なら「土地値で買える物件とは、建物の価値がゼロの『ボロ物件』ではないのか?」と疑問に思われるかもしれません。
しかし、そんなことはありません。あくまで入居者がきちんと入り続ける、きれいで暮らしやすい建物であることが大切です。
いわゆる〈ボロ物件〉は、入居者が入りにくい、修繕費が非常に高額になるなどのリスクがあるため、とくに不動産投資初心者の方は避けたほうが無難です。
実際に、私たちがほぼ土地値で購入したアパートの実例をお見せしましょう。
「なるべく土地値に近い価格で買う」という思考が必須
私たちは、平均利回り13%~15%で、土地値に近い価格のアパートを、年間40~50棟、過去8年の類型で300棟以上購入してきました。
このようなアパートは、数年で買値よりも1,000万円、2,000万円高く売れることもあります。
不動産投資は利回りやキャッシュフローだけに着眼しがちですが、将来的にいくらで売れるのかという出口がとても大切なのです。「保有中のキャッシュフロー+出口の販売価格」の総合で、不動産投資の成否は判断されます。
したがって、成功のためにはキャッシュフロー利回りとあわせて、土地値の確認は必ず必要であり、なるべく土地値に近い価格で買うという考え方を外すことはできません。
不動産投資の成功ポイントとしてぜひチェックしてください。
オスカーキャピタル株式会社
代表取締役社長 金田 大介