首都圏模試センターによると、2023年の首都圏の中学受験者数は推定で6万人を超え、過去最多となったそうです。これは、小学6年生のうち「5人に1人以上が中学受験生」という計算になります。親ならば、子どもにはより良い環境で教育を受けさせたいと思うものですが、中学受験でお金がかかるのは受験期間だけではないと、石川亜希子AFPはいいます。具体的な事例を交えて詳しくみていきましょう。
もう、勘弁して…世帯年収950万円の40代夫婦、息子が名門私立中学に合格し歓喜→入学3ヵ月で「大後悔」のワケ【FPが警告】

極めつけは長女の「ねえ、わたしも受験したい」

A家はそれでもなんとかやりくりしていたそうですが、極めつけは小学校4年生になる長女のひと言でした。

 

「ねえ、わたしも中学受験したい」

 

結局、長男と同じ大手進学塾に通いはじめた長女。4年生のうちは塾の費用は月3~4万円ですが、来年再来年と、支出が増えていくことは確実です。娘の意欲は親として嬉しい一方、長男の学費に長女の塾代で出費はかさむばかり……長男の入学から約3ヵ月、長女の入塾から2ヵ月、毎月の請求にAさんは思わず「もう、勘弁してくれ」と嘆いていたそうです。

 

実際、家計は切り詰めればなんとか赤字ではないものの、旅行や帰省などもできないばかりか、貯蓄などはまったくできません。

 

このままでは、老後資金どころか教育資金を用意できるのか心配になってしまったAさん、自分たちで考えることによる不安とストレスを軽減させるため、FPに相談してみることにしました。

私立中学に進学させる親=高年収世帯なのか?

文部省「子供の学習費調査」によると、公立中学校から公立高校に進学した場合は、6年間の学費が約315万円であるところ、私立中学校から私立高校に進学した場合は約746万となり、約431万円の開きがあることがわかっています。

 

中学受験するのであれば、お金の面で事前準備が欠かせないことは、言うまでもありません。

 

また高校、大学と進学していくなかで、文系なのか理系なのか、私立なのか国立なのか、自宅通学なのか一人暮らしが必要なのか、さまざまなケースを想定し、都度家族で話し合うことが必要です。

 

このままでは、A家はまったく貯蓄できない状況が続き、なにか特別な出費が発生しても対応することができなくなってしまいます。高年収だと思っていたのに、こんなにお金のことばかり考えてしまって、あんなに家族で喜んだ合格でしたが、中学受験は不相応な選択だったのでしょうか。

 

いえ、そんなことはありません。文部省「子供の学習費調査」によると、私立中学に通う子どもを持つ親の世帯年収は、1,200万円以上が40%を占めるものの、600万~1,000万未満が32%と、決してAさんの家庭だけが悩んでいることではないのです。

 

子どもにより良い環境で教育を受けさせたいという思いを最優先に、各家庭でやり繰りしていることが窺えます。