値上げのニュースが止まらず、収入のほとんどを年金に頼る、年金生活者の生活苦は深刻度を増しています。そのようななか、高齢者犯罪が増えているとか……。本記事では、Aさん(70代/女性)の事例とともに、高齢者犯罪の実情についてCFPの伊藤貴徳氏が解説します。
年金月10万円「もう、限界。」…やせ細った70代・一人暮らしのおばあさん、決して越えてはいけない一線 【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

貯金もないおひとり様高齢者、その行き着く先は…

「おにぎりのひとつくらい……」 

 

ある日、お腹を空かせたAさんは、いつも通っているスーパーでおにぎりを盗んでしまおうか、そんな考えがふと頭をよぎったそうです。 

 

「知り合いに万引きで捕まって刑務所に1年半、服役をした人がいます。そんな話を聞くと、絶対にしてはいけないことだとわかるのに、衝動的にいつか本当にやってしまうのでは、と自分のことが怖くてたまらないです」 

 

令和4年版 犯罪白書によると、全体の犯罪件数は引き続き戦後最少を更新しているものの、犯罪における高齢者率は増加を続けています。 65歳以上の高齢入所受刑者の人数は、令和3年は2,233人で、平成14年と比べると約2倍に。男性・女性ともに窃盗が最多で、特に女性高齢者の窃盗割合は87.5%となっています。 

 

Aさんが万引きをしようと思ってしまうものは、たいていが食料品で、高額な食料というよりは、日常的に口にするものばかり。しかも、半額や割引となっているものがほとんど。 

 

「電気代・ガス代も値上がり、食料品も値上がり。これまでと変わらず暮らしているだけなのに生活が苦しくなっています。同じ生活ができないのなら、安いものを買うしかない。こんな毎日の繰り返しで、いつ終わりが見えるのか……」

 

物価高という生活苦もさることながら、1人で暮らしていくという不安や寂しさも相まって、このような行為が頭をよぎる、とAさんは話します。 

 

上記データからも、特に女性の高齢単身世帯においてこの傾向は顕著に表われています。 

 

Aさんには、まずは生活の立て直しから始めてもらうことを提案しました。 平成27年4月から、生活困窮者への支援制度が始まりました。Aさんも、お住まいの自治体での生活相談窓口を活用し、生活の立て直しを図ることにしました。 

 

「どうにかしなければいけないと思っているけど、どこになにを相談したらいいかわからない」という方は多いでしょう。 

 

困ったときは下記のような自立相談支援機関での相談や、お住まいの各自治体の福祉事務所での生活相談をきっかけにしていただけたらと思います。 

 

 

https://minna-tunagaru.jp/ichiran/ 

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15468.html 

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<参考文献> 

総務省 2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年(令和5年)10月分 

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf 

法務省 令和4年犯罪白書 

https://www.moj.go.jp/content/001387336.pdf 

 

 

伊藤 貴徳

伊藤FPオフィス

代表