年金だけで生活できない高齢者、急増…悠々自適な老後は夢のまた夢
厚生労働省『令和4年 国民基礎調査』によると、所得のうち年金収入だけに頼って生活している世帯は、44.0%。「年金だけで生きていけてるわ」と回答する高齢者は半数を割っています。この数値を確認できるのは、同調査の2013年から。そこで「年金100%」の割合を経年でみていくと、「2013年57.8%→2022年44.0%」と、10年あまりの間に10ポイント近くも減少していることがわかります。ちなみに同調査は2020年は中止。また2021年に急減しているのは、コロナ禍の給付金など、年金以外に収入があったためと考えられます。
【総所得に占める年金の割合】
総所得の100%:44.0%
総所得の80~100%:16.5%
総所得の60~80%:13.9%
総所得の40~60%:13.5%
総所得の20~40%:8.5%
総所得の20%未満:3.6%。
出所:厚生労働省『令和4年 国民基礎調査』
【「収入は100%年金」の高齢者世帯の割合】
2022年:44.0%
2021年:24.9%
2019年:48.4%
2018年:51.1%
2017年:52.2%
2016年:54.2%
2015年:55.0%
2014年:56.7%
2013年:57.8%
昨今、「収入は年金100%」という高齢者が減少していますが、その分増えているのが、高齢の就業者。厚生労働省『労働力調査』によると、2013年、高齢就業者は596万人でしたが、2022年には912万人と、1.5倍になりました。その分、「収入は年金だけじゃない」という高齢者が増えたことになります。
株式会社リクルートの調査機関ジョブズリサーチセンターが行った『シニア層の就業実態・意識調査2023』(個人編)によると、「高齢者が仕事をしたい理由」として最も多く聞かれたのが「生活の維持のため」で41.9%。逆をいえば「生活を維持さえできれば、仕事なんてしない」という人が相当数いるといえるでしょう。
また前出の『国民生活基本調査』では、高齢者世帯の生活意識として、「生活が苦しい(「大変苦しい」と「やや苦しいの合計)」が48.3%。「ゆとりがある(「ややゆとりがある」と「大変ゆとりがある」の合計)」はわずか6.6%。「悠々自適な老後」を手に入れるのは、かなり高いハードルのようです。
私たちが思っている以上に厳しい状況下にある、日本の高齢者。今後、年金財政はますます厳しくなり、受給額は減少することが予想されています。また昨今のようなインフレは、年金世代を直撃。一気に生活苦に陥るようなこともあるでしょう。現役世代の老後は、いまよりも厳しいのは確実です。
――いまこんなに苦しい思いをしているのに、将来はもっと苦しくなるなんて……もう、やってられない!
思わず、投げやりな気持ちになるのも仕方がないことかもしれません。現役世代ができることとしたら、自助努力。老後の安泰のためには「年金だけで生きていく」という憧れはとっとと捨てて、コツコツと資産形成に励むしか方法はなさそうです。
[参考資料]