悠々自適な老後生活が「一気に崩壊」…よくあるパターン、3つ
60歳の定年退職前、大卒のサラリーマン(正社員)が手にしていた給与は、月収で48.3万円程度(厚生労働省『令和4年 賃金構造基本統計調査』正社員・大卒男性・50代後半の中央値)。そして60歳で迎える定年退職の日、そこで手にするのは2,000万円の退職金。現在、年金支給の始まる65歳まで働き続けるサラリーマンが8割といわれていますが、「十分に老後資金がある」と判断すれば、完全に仕事をやめるのも“あり”かもしれません。
夢にまでみた、悠々自適な老後生活。しかし、誰もが順風満帆に日常が進んでいくと考えていますが、全員が想定通りにいくとは限りません。なかには幸せな老後生活が一転して崩壊……そんな想定していなかった出来事に直面するケースも珍しくはないでしょう。危機に直面して「何かの間違いでは!」と叫んだどころで、後の祭りです。老後の想定外、よくあるパターンを事前に知って、対策を立てておくことが重要です。
悠々自適な老後生活の崩壊パターン①親の介護
子が60歳であれば、親は80代~90代というケースが多いでしょう。厚生労働省の調査によると、要支援・要介護者の割合は、80代前半で25.8%、85歳以上になると59.8%と過半数を超えます。親と同居しているのか、それとも別居しているのかで介護の関わり方は変わりますが、同居しているなら時間が取られることは覚悟しておく必要があります。
また介護負担のほかに気になるのは「お金のこと」。生命保険文化センター『生命保険に関する全国実態調査』によると、介護費用は月額8.3万円、また介護期間は平均5年1ヵ月でした。また在宅での介護か、それとも施設に入居するかでも、費用は変わってきます。「親の年金と貯蓄で賄う」というケースが多数を占めるものの、昨今は「入居期間が想定以上=長生き」となり、費用が不足する場合も。そうなると、子どもが不足分を補うことも考えないといけません。
時間もお金も取られるかもしれない親の介護。元気なうちに「介護が必要になった場合はどうしたいのか。また費用はどうするのか」を確認しておくことが第一歩。そして介護サービスを受けるにしても、施設に入居するにしても、できるだけ「親の年金だけ」で賄うようプランニングできれば安心です。
悠々自適な老後生活の崩壊パターン②マイホームのリフォーム
現在40歳前後で30年程度のローンを組んでマイホームを実現する、というパターンが多く、完済は70代ということも珍しくありません。なんとか返し終わった……しかしそこで終わりというわけではなく、住み続けるには、当然維持費を意識しなければいけません。
一般社団法人住宅リフォーム推進協議会『2022年度住宅リフォームに関する消費者実態調査』によると、実施者のリフォーム予算は平均265万円、実際にかかった費用は平均390万円と、想定を上回るのが定番。50代以上に限ると、25.6%が「予算を上回った」と回答しています。現役時代のように、住宅ローンを利用して……というわけにはいきませんから、老後のリフォームはほとんどが自己資金。きちんと計画を立てておかないと、直すべきところも直せない、悲惨な状態のマイホームに住み続けるという、なんとも悲惨な生活を強いられることも。
このようなことを回避するためにも、ローン返済中でもバリアフリーにリフォームした場合の費用感を把握し、老後の生活費とは別に確保しておくことが重要です。