原則、65歳から受給が開始される公的年金。制度が複雑なので、「なんとかなるでしょ」と深く考えない人も多いようです。そのため「年金の基本中の基本」も知らずに、恐ろしい事態に直面するケースも。みていきましょう。
平均年金月17万円に「なるほど。」と納得の50代サラリーマン…「年金振込通知書」で気づいた大失態に、周囲は苦笑のワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

あなたの年金は月17万円…このまま信じると痛い目にあう

自分の場合、どれくらいの年金がもらえるのか。「ねんきん定期便」をチェックしたり計算したりして、ある程度の見込み額は見えてきます。

 

さらに、「みんなはどれくらいもらっているのか」というのも気になるところ。厚生労働省『令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、国民年金受給者の老齢年金の平均年金月額は、令和3年度末現在5万6,479円。厚生年金保険(第1号)の老齢年金の平均年金月額は、併給する老齢基礎年金合わせて14万3,965円。65歳以上男性に限ると16万9,006円、65歳以上女子に限ると10万9,261円です。

 

50歳のサラリーマンが、20歳から60歳まで正社員として平均給与をもらい続けたとしたら、65歳から受け取ることのできる年金額はどれくらいになるか計算してみると……まず厚生年金部分は10.3万円ほど、国民年金も満額受給となれば、合わせて16.9万円となり、統計上の平均とほぼ同額の受給額になります。

 

50歳サラリーマンの平均給与は月収で42.1万円、年収で693.1万円。定年直前には月収43.1万円、年収701.6万円とピークに達します。定年後も働くか、働かないかは別として、年金収入との差は結構なもの。

 

――年金月17万円かぁ……なるほど

――いまのまま支出を続けていたら老後は破産するな。少しずつ生活を見直さないと

――万が一に備えて貯蓄も加速させないと

 

色々と考えて65歳からの生活に備えることになります。そしていよいよ年金を初めて受け取るとき、ワクワクしながら振込額を見てみると……「んっ⁉」と首を傾げる人も。

 

――あれ、思ったよりも年金が少ないぞ

 

そう、ここまで記されていた金額は、いわゆる「額面」であり、「手取り額」ではありません。年金収入は雑所得であり、課税対象になります。そのことを知らず「なんてこった」と頭を抱える人が意外と多いのです。

 

原則として、年1回(6月)に送られてくる「年金振込通知書」には、「介護保険料額」「後期高齢者医療保険料または国民健康保険料」「所得税額および復興特別所得税額」「個人住民税額」「年金支払額=1回に支払われる控除前年金額」と「控除後の振込額」が記されています。これで「年金から税金やら何やら、こんなに引かれるんだ」と一目瞭然、というわけです。

 

実際に受け取れる年金額は、額面の85~90%程度。月17万円程度であれば、実際は14.5万~15.3万円程度です。収入が限られる老後、月1万~2万円の誤差は大きな違い。額面をベースに生活を見据えて準備をしていたら、老後破産まっしぐら。

 

――年金の見込み額が額面なんて聞いてない!

 

そう、大騒ぎしても周りを苦笑させるだけ。複雑な年金制度ですが、「年金は雑所得で課税対象」という基本中の基本くらいは覚えておいて損はありません。

 

[参考資料]

金融広報中央委員会『令和4年 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]』

日本年金機構『ねんきん定期便関係』

厚生労働省『令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』