終の棲家として「老人ホーム」という選択をする人が増えています。その費用は自身で負担するケースが多数派ですが、思いかけず、家族に負担をかけてしまうことも。みていきましょう。
年金「月14万円」の90代母…「老人ホーム請求額」に60代娘が絶句「えっ、何かの間違いでは?」 (※写真はイメージです/PIXTA)

老人ホーム入居者「4人に1人」の割合で「子ども」も費用負担

昨今、「老人ホームの請求額が急激に値上がりした!」という投稿が相次いでいます。なかには「倍になった!」という、極端なケースも。そう騒いでいるのは、もちろん入居者本人ではなくその家族。

 

そもそも老人ホームの費用、払うのは入居者自身というのが多数派ではあるものの、子どもなどの家族が払うケースも珍しくはないようです。

 

株式会社Speeeが運営する『ケアスル 介護』が行ったアンケート調査でも、介護施設の費用を負担している人は「入居者自身」が最も多く64.0%。次に多いのが「入居者の子ども」の24.8%、「入居者の配偶者」が6.4%、「入居者の孫」が1.6%。少数派にはなるものの入居者の4人に1人の割合で「老人ホーム費用を子どもが負担」というのが現状。自身の生活はあるし、自身の老後の備えもあるし、さらには親の老人ホーム費用まで……大変です。

 

通常、老人ホームへの入居の際の費用は、初期費用となる入居一時金と、月額費用を考える必要があります。入居一時金は家賃の前払いみたいなもの。償却期間5年などと決まっていて、その前に退去した場合は、一部返金されます。月額費用は毎月の管理費や食費など。そのほかサービス外の費用として、月数万円程度を見込んでおきます。

 

入居一時金はゼロ円から、高級を謳い文句とする施設の中には、数億円というところも。月額費用は15万~30万円で、「自身の年金と貯蓄の取り崩しで対応する」というケースが多いようです。

 

たとえば、元会社員の夫を亡くした専業主婦の年金受給額は、夫の遺族年金(平均8万円)と、自身の国民年金(満額6.6万円)を合わせた、月14万円程度。これで老人ホーム入居の際のベースになり、足りない分は貯蓄で対応となります。

 

前出の女性の母親も同程度の年金額だとすると「年金+月5万円の貯蓄の取崩し」→「年金+月10万円の貯蓄の取崩し」になったのですから一大事。請求額を知ったのと同時に言葉を失い、「えっ、何かの間違いでは⁉」と施設に対し疑念を抱いても仕方のないことです。

 

前述の通り、昨今は老人ホームでも値上げラッシュ。その値上げ率も結構なもので、「当初、親の年金で賄っていた老人ホーム費用だが、値上げにより足が出ることになり、その分は子どもが負担しなければならない」というケースも珍しくありません。

 

年金も物価高の分増えれば何ら問題はありませんが、そう増えるものではありません。私たちの賃金は物価上昇分を上回ることなく、実質減少といわれていますが、年金についても同様。来年、2024年度の年金額は増額になるものの、実質マイナスが確実視されています。

 

親の老人ホーム費用の値上げに、戦々恐々……そんな子どもたちが、来年以降もますます増えていきそうな予感です。

 

[参考資料]

総務省統計局『令和2年国勢調査』

株式会社TRデータテクノロジー ~ランキング上位500社 有料老人ホーム等の月額管理費・食費改定の動き~

株式会社Speee【介護アンケートVer.19】費用は誰が支払う?介護施設の費用に関するアンケート調査