残された家族の生活を守るための制度である「遺族年金」。しかし、それでも生活が困窮する遺族がいます。少々、時代遅れな遺族年金制度、その実態をみていきましょう。
愛する妻、急逝…〈月収41万円・55歳サラリーマン〉号泣、さらに理不尽な「遺族年金」に困窮「何かの間違いでは」【共働き夫婦の災厄】 (※写真はイメージです/PIXTA)

専業主婦世帯優勢を前提に作られた「遺族年金制度」

サラリーマンの夫と専業主婦。もし夫が亡くなったら、残された家族は生活できなくなる……このようなことがないよう作られてのが遺族年金制度です。

 

2020年に行われた国勢調査によると、専業主婦世帯(夫が就業者、妻が非就業者)は581万6,497世帯。一般世帯総数は4,885万世帯なので、およそ12%が専業主婦世帯ということになります。それに対して、夫も妻も就業者という共働き世帯は1,320万6,934世帯。全世帯の27%を占め、専業主婦世帯の2.3倍になります。

 

元々、多かったのは専業主婦世帯。1985年では専業主婦世帯が936万世帯に対し、共働き世帯は718万世帯でした。1990年あたりから双方は拮抗。1996年以降は、一貫して共働き世帯が上回り、2010年代に入ると、専業主婦世帯の減少幅が拡大。今日では専業主婦世帯のほうがレアな存在となっています。

 

専業主婦世帯の減少、共働き世帯の増加に伴い、遺族年金制度に疑問符が投げられるようになりました。

 

ここで遺族年金について振り返ってみましょう。遺族年金は、国民年金または厚生年金の被保険者、または被保険者だった人が亡くなったときに、その人によって「生計を維持されていた」遺族が受け取ることができる年金。

 

*生計維持:原則、①生計を同じくしている(同居している)こと(別居していても、仕送りをしている、健康保険の扶養親族である等の事項があれば認められる) ②収入要件(前年の収入が850万円未満、または所得が655.5万円未満であること)を満たしていること のいずれも満たしてる場合

 

国民年金に由来する「遺族基礎年金」と、厚生年金に由来する「遺族厚生年金」があり、亡くなった人の年金の納付状況や、遺族年金を受け取る人の年齢や優先順位など、条件をすべて満たしている場合に受け取ることができます。

 

◆遺族基礎年金

[受給要件]

1.国民年金の被保険者である間に死亡したとき

2.国民年金の被保険者であった60~65歳未満の人で、日本国内に住所を有していた方が死亡したとき

3.老齢基礎年金の受給権者であった人が死亡したとき

4.老齢基礎年金の受給資格を満たした人が死亡したとき

[受給対象者]

1.子のある配偶者

2.子

 

◆遺族厚生年金

[受給要件]

1.厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき

2.厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき

3.1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けとっている方が死亡したとき

4.老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき

5.老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき

[受給対象者]

1.子のある配偶者

2.子

3.子のない配偶者

4.父母

5.孫

6.祖父母

 

(注意)

ここでいう子、および孫は18歳になった年度の3月31日までにある人、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある人