病院にかかった際、調剤薬局で処方箋を出してくれる「薬剤師」。病院や薬局で働いているイメージが一般的ですが、薬剤師にはさまざまな働き方があり、場合によっては高い収入を得ることも可能です。しかしそのせいで「薬剤師の偏在化」が問題になっていると、小児科医の秋谷進氏はいいます。薬剤師の「収入面」に焦点をあてながら、現在日本の医療業界が抱えている問題について、秋谷氏が解説します。
平均年収583万円…薬局や病院にいる「一般的な薬剤師」が不足しているワケ【医師が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

キャリアプランに応じて大きく変わる…薬剤師の「年収」

このように、薬剤師といってもキャリアプランによって働き方が大きく変わります。そして働き方や働く場所が異なることで、当然「年収」も大きく変わってくるのです。

 

まずはドラッグストアや病棟などで働く“一般的な薬剤師”の年収をみていきます。

 

厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、年代別の薬剤師の年収は[図表1]となっています。

 

[図表1]薬剤師の年代別平均年収 出所:厚生労働省 E-Stat「令和4年賃金構造基本統計調査」より著者作成 ※「きまって支給する現金給与額×12ヵ月+年間賞与その他特別給与額」で平均年収を算出
[図表1]薬剤師の年代別平均年収
出所:厚生労働省 E-Stat「令和4年賃金構造基本統計調査」より著者作成
※「きまって支給する現金給与額×12ヵ月+年間賞与その他特別給与額」で平均年収を算出

 

全年代での平均年収は、583.4万円です。国税庁の「令和3年分民間給与実態統計調査」によると、一般的な日本人の平均年収は443万円といわれていますから、薬剤師の一般的な年収は日本人の平均年収よりは高いといえます。

 

ちなみに、薬剤師の年収は、都道府県ごとで大きく異なります。都道府県別の年収(トップ5)は[図表2]のとおりです。

 

[図表2]薬剤師の平均年収(都道府県別ランキング)トップ5  出所:厚生労働省 E-Stat「令和4年賃金構造基本統計調査」より著者作成
[図表2]薬剤師の平均年収(都道府県別ランキング)トップ5

出所:厚生労働省 E-Stat「令和4年賃金構造基本統計調査」より著者作成

 

1位と2位はいずれも九州でした。なお東京都は第23位なので、薬剤師の場合は必ずしも「大都市=年収が高い」というわけではないようです。

 

では、たとえばMR(医薬情報担当者)などで製薬会社に務めた場合はどうなるのでしょうか。

 

MRの給与…トップの平均年収はなんと1,560万円

東京都渋谷区で行われている「年収ランキング運営事務局」の調査によると、医薬品企業での平均年収は「771万円」となっています。

 

また年収ランキングで1位の企業は「ソレイジア・ファーマ」という会社で、平均年収は1,560万円です。平均年収1,560万円は、民間企業としてもトップクラスの給与水準でしょう。

 

もちろん調査方法が異なるため単純に比較することは難しいですが、薬剤師の一般的な給与と比べても、製薬会社の給与は高いことがうかがえます。

 

このように、「薬剤師」といってもキャリアによって「年収」が大きく変わってきます。だからこそ、高い年収の職種、企業に薬剤師が偏在化してしまい、日本は世界でも薬剤師の数が多いのにも関わらず「薬剤師不足」という不思議な現象が起こってしまうのです。