病院にかかった際、調剤薬局で処方箋を出してくれる「薬剤師」。病院や薬局で働いているイメージが一般的ですが、薬剤師にはさまざまな働き方があり、場合によっては高い収入を得ることも可能です。しかしそのせいで「薬剤師の偏在化」が問題になっていると、小児科医の秋谷進氏はいいます。薬剤師の「収入面」に焦点をあてながら、現在日本の医療業界が抱えている問題について、秋谷氏が解説します。
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「薬剤師の偏在化」をなくすためにできること
働く場所によって、薬剤師としてのキャリアも年収も大きく異なる……この問題は非常に根深く、個人の努力ではいかんともしがたいところがあります。実際、病院で働く若手薬剤師の減少は、近年ますます深刻化しています。
このようななか、厚生労働省が実施した調査では、「薬剤師が不足している」と回答した病院の割合が65%にのぼっているのです。
もしこれを打破できるとしたら「年収」以外で「病院で働くメリット」をもっと打ち出すことです。
医師の世界では「専門医制度」を設けており、ある程度の期間は大病院にいないと、医師としてのキャリアパスを保てないようになっています。
薬剤師のなかでもこうした「専門薬剤師」の制度も整備されていますが、より強化することで薬剤師の偏在化を少なくすることができるかもしれません。
また、病院ごとで「年収以外の働くメリット」をもっと強調することが大切になるでしょう。
今後、ますます加速するかもしれない「薬剤師の偏在化」。日本の医療を底上げするためにも、国や自治体による具体的な対策が待たれます。
秋谷進
小児科医