元・会社員+専業主婦(夫)という夫婦の場合、平均して2人で「月22万円」の年金を受け取っているというデータがありますが、これだけの年金を得るには、サラリーマンだった夫は現役時代どれほどの給与を得ていなければならないのでしょうか。サラリーマンが老後に受け取る厚生年金の計算式から、逆算して考えてみます。
元・会社員+専業主婦の2人で「月22万円」…65歳から“平均的な”年金を受け取るための〈サラリーマン時代の給与額〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

「前年比2.8%」の物価上昇が無職・高齢者夫婦の家計を襲う

ところで、そもそも「月22万円程度」の年金を受け取れるのは、どんな夫婦でしょうか。現在の年金受給世帯に多い、元・サラリーマンと専業主婦(夫)という組み合わせの世帯で考えてみましょう。

 

保険加入期間を40年(480ヵ月)とすると、現時点では国民年金の老齢基礎年金を年間79万5,000円受け取れます。現役時代、会社員として勤めてきた人は老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金を受け取れる訳ですが、これを構成する「報酬比例部分」の計算に、現役時代の給与が影響してきます。

 

厚生年金は加入期間が2003年3月までは①「平均標準報酬月額(≒平均月収)×7.125/1000×2003年3月までの加入月数」、加入期間2003年4月以降は②「平均標準報酬額(≒平均月収+賞与)×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数」で計算しますから、会社員の標準報酬月額が35~37万円、年収にして520万~550万円程度であれば、65歳以降に夫婦で21~22万円の年金を受け取れることになります。

 

ただ、国税庁の『令和3年 民間給与実態統計調査』で給与所得者の年間給与額別の構成比をみると、「500万円未満」の人の割合が男性の55%、女性の87%に上ります。このデータから考えると、厚生年金保険料を払い込む期間を通じて平均年収520万~550万円以上という条件を満たすのは、そう易しくはなさそうです。

 

平均的な支出状況からみて、そもそも年金「月22万円」では赤字が発生することは前述の通りですが、それすらも受け取れない可能性が高い元・会社員+専業主婦(夫)の世帯に追い打ちをかけるのが、直近の物価上昇です。総務省が10月に公表したところによると、23年9月の消費者物価は前年比2.8%増となりました。生鮮食品を除く「食料」は、同8.8%上昇。とくに麺類は10.0%増、菓子類は11.6%増と2ケタの上昇をみせ、家計を脅かしています。

 

65歳以上・無職の夫婦の1ヵ月の生活費が平均23万~24円程度であることは上にみた通りですが、仮に政府が目標として掲げている「前年比2%」の物価上昇が続いたとすると、月ごとの消費支出は5年後に25万4,000円、10年後には28万円に達します。

 

現在65歳だとすると、70歳の時点で月2万円ほど、75歳の時点で月5万円ほど上乗せされるということです。

 

長期的に平均賃金が横ばいで推移し、さらに少子高齢化の進行が止まらない現状からみると、将来、年金額が大きく増える可能性は限りなく低いでしょう。それどころか、2040年半ばには2割ほど年金が目減りするとの政府の試算もありますから、いまの現役世代には自助努力による資産形成がよりシビアに求められることになりそうです。

 

また、定年退職や年金生活突入までの時間が限られている50代後半のサラリーマン世帯は、資産形成にラストスパートかけると同時に、住宅ローン・自動車ローンが残っている場合は安定収入のあるうちに繰り上げ返済を行って、可能な限り残債を圧縮しておくといいかもしれません。ほかにも、保険料や通信費など、毎月・毎年といった単位で発生する支出を見直すことで家計のサイズダウンを図るなど、早くから対策を打っておく必要がありそうです。