60歳の定年を前にした50代は、会社員人生のなかで給与額が頂点に達する時期。子育てもひと段落して、次は自分たちの老後のためにお金を貯めるぞ! と意気込んでいるタイミングです。一方で「親の介護」という新たな難問を突き付けられる場合も。要介護となっても「経済的な負担は親が負う」というのが一般的ですが、想定外のことも。みていきましょう。
えっ、私が立て替えるの?年金14万円・80代母「老人ホーム費用」足りず、月収28万円・50代娘の悲鳴 (※写真はイメージです/PIXTA)

老人ホームに入居を決めた母…想定以上の長生きに複雑な気持ちになるワケ

50代になると「親の介護不安」が増すものの、在宅介護では負担が重すぎたり、親の介護をするには家が遠すぎたり……そうなると事業者にあれこれと頼むほか、老人ホームへの入居が現実路線、といったところ。

 

老人ホームといっても色々な種類がありますが、比較的費用の安い公的介護保険施設には、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム、いわゆる特養)、介護老人保健施設、介護医療院、 介護療養型医療施設の4つがあります。要介護と認定された人であれば、施設サービス費用の1~3割を負担します。

 

その費用は誰が負担するのでしょうか。株式会社Speeeが運営する「ケアスル 介護」が行った調査で「介護施設の料金は主に誰が支払っていますか?」と聞いたところ、「入居者自身」が最も多く64.0%。「入居者の子ども」24.8%、「入居者の配偶者」6.4%、「入居者の孫」1.6%と続きます。圧倒的に入居者本人が払うケースが多いものの、その子どもが払うケースも4人に1人という水準です。

 

元会社員の夫(父)を亡くした妻(母)の場合、自身の年金と夫の遺族年金が毎月の収入となります。平均的な金額だと、およそ額面14万円ほど。施設費用がこれで賄うことができなければ、あとは貯蓄を取り崩すことになりますが、老人ホームの費用は施設によってピンキリです。

 

まず初期費用となる入居一時金は、0円をうたう施設から、数億円と高級をウリとする施設まで。さらに月々の利用料は、15万円~30万円程度がベースで、さらに利用料に含まれない費用が、平均月2万円だといいます。たとえば月々の利用料がおおよそ20万円程度だったなら、平均的な年金額では月7万円ほどの取り崩しが必要となります。

 

――老人ホームに入るわ。大丈夫、年金と貯金でなんとかなるから(80代母)

 

そうは言っていたものの、母の入居期間は予想以上に長くなり……長生きは嬉しいことであるものの、お金は底をつき、ひとり娘に泣きつくことに。

 

――えっ、私が立て替えるの⁉ なんとかなるっていったじゃない!(50代娘)

 

厚生労働省の調査によると、老人ホームの平均入居期間はサービス付き高齢者住宅(サ高住)で約4年、住宅型有料老人ホームで約6年、介護付き有料老人ホームで約9年だといいます。ただこれは平均値。入居期間が10年以上に及ぶことも珍しくはありません。親が長生きすることは喜ぶべきことですが、経済的な負担が子どもに及ぶ可能性があります。

 

50代は自身の老後のために資産形成を加速させたい時期。そのタイミングで親の老人ホーム費用の肩代わりは、できれば遠慮したいところ。このような子どもの事情も考慮して、親もきちんと準備しておきたいものです。