病院にかかった際、調剤薬局で処方箋を出してくれる「薬剤師」。「医師などに比べると、働くハードルが低そう」と思っている人もいるかもしれません。しかし、薬剤師になるには「高いハードルがある」と、小児科医の秋谷進氏はいいます。複数のデータをもとに、薬学部になるための道のりと展望についてみていきましょう。
6年間で1,400万円超の大学も…「薬剤師」になるための“学力だけではない”高いハードル (※写真はイメージです/PIXTA)

薬剤師になるためには「お金」も必要

また、薬剤師になるためには必ず大学に進学しなければいけませんから、忘れてはいけないのが「学費」です。国公立大学と私立大学で異なりますが、特に私立大学の場合はそれなりに高い学費が必要になります。

 

国公立の場合、おおむね学費は以下のとおりです。

 

入学金……約28万2,000円

年間授業料……約53万5,800円

6年間の総学費:入学金と年間授業料を合計し、6年間で約350万円

 

6年間なので、4年制大学より少し金額は上がりますが、高めではありますが私立大学と比較すれば「妥当な金額」といえるでしょう。

 

しかし、私立大の場合はどうでしょう。年間約200万円が最低ラインで、6年間でみると約1,200万円にものぼります

 

[図表2]薬学部6年間の学費ランキング(参考)
[図表2]薬学部6年間の学費ランキング(参考)

※ 上記はあくまでも参考として表にまとめました。薬学部には6年制と4年制があり、算出方法が異なる可能性があります。また随時変更が行われているため、正確な学費に関しては、各大学ホームページ等でご確認ください。

 

[図表2]は、私立薬学部6年間学費をランキングにしたものです。しかも、この費用は授業料だけですから、実際にはさらに生活費や施設費、教材費などがかかります。また、授業や国家試験などでつまずき留年や浪人となると、さらに学費がかさんでしまうことになります。

6年間学んだ先にある「国家試験」の壁…1度落ちると再合格率は“半分以下”

大学進学後のハードルとして、6年間学んだ先にそびえ立っているのが、「国家試験」です。この国家試験は厚生労働省が実施し、薬剤師としての基本的な知識と技能を評価するもので、誰でも受かるような甘いものではありません。

 

今年2月に行われた第108回薬剤師国家試験の合格者数は、受験者数13,915人のうち9,602人。合格率は69.0%と、7割を切っています。

 

さらに、新卒者の合格率は84.9%と高い合格率なのですが、既卒者の合格率は44.1%と大きな差があります。1度合格の機会を逃すと、その後既卒での合格はなかなか厳しいことがわかりますね。