病院にかかった際、調剤薬局で処方箋を出してくれる「薬剤師」。「医師などに比べると、働くハードルが低そう」と思っている人もいるかもしれません。しかし、薬剤師になるには「高いハードルがある」と、小児科医の秋谷進氏はいいます。複数のデータをもとに、薬学部になるための道のりと展望についてみていきましょう。
6年間で1,400万円超の大学も…「薬剤師」になるための“学力だけではない”高いハードル (※写真はイメージです/PIXTA)

今後も高需要…薬剤師は「安定」が魅力

このようにいくつものハードルを乗り越え、薬剤師はみなさんのお近くの薬局などで働いているわけです。これだけ大変な道のりを超えたわけですから、それにふさわしいメリットがあるはずです。薬剤師は、収入面でも今後の展望としても、その「安定性」が魅力といえます。

 

比較的高く、安定した収入

厚生労働省が実施した「令和3年度賃金構造基本統計調査」によると、薬剤師の平均年収は580.5万円。内訳としては、基本月給が40.4万円、年間賞与が96.2万円となっています。日本人の平均年収が443万円であることを考えると、比較的高い給与をもらえる職種です。

 

しかも近年薬剤師の年収は上昇傾向にあり、同資料によると平成29年から令和3年までの5年間で平均年収は約37万円増加しています。先述したように、薬剤師の役割はどんどん重要視されていますから、この傾向は続くとみられます。

 

ちなみに、さらに詳しくみると、男性薬剤師の平均年収は630.3万円、女性薬剤師の平均年収は545.3万円となっており、男性薬剤師のほうが年収が高い傾向がみられます。

 

需要も安定 

そして、薬剤師のメリットとして挙げられるのはその「需要の高さ」でしょう。高齢化する日本においては、今後も医療の需要が高まる可能性が高いです。

 

また、薬剤師は薬局や病院だけがフィールドではありません。製薬会社や研究機関、教育機関などで働くこともできます。こうした場における新たな医薬品の開発にも薬剤師の存在が不可欠ですから、長期的にみても、薬剤師がなくてはならない存在であることは十分想像できます。

 

まとめ

薬学に関する専門知識を活用し、患者の治療やヘルスケアに貢献する薬剤師は、働きがいのある職業のひとつです。直接患者さんと対面することも多いですから、薬を通して直接患者さんに「ありがとう」といわれるなど、「社会に貢献している」と実感しやすいといえます。

 

さらに、医薬品の開発や医療技術の進歩にともない、薬剤師は常に学ぶ機会があり、個人の成長を感じやすい職業でもあります。

 

働きがいは言い換えると「プレッシャー」ともいえ、患者の命を支える職業である薬剤師は高いプレッシャーがかかる職業ではありますが、魅力ある職業のひとつだといえるでしょう。

 

 

秋谷進

小児科医