「65歳になったら年金がもらえる」というのは知っていても、年金制度をしっかりと理解している人は決して多くありません。たとえば「加給年金」のように“一見おトクな制度”を利用しようとすると、かえって損してしまうこともあると、FP Office株式会社の梅田雅美FPはいいます。今回は、5歳差の60代夫婦の事例をもとに、加給年金の注意点をみていきましょう。
定年退職した65歳夫、年収300万円の60歳妻と「加給年金」申請も…年金事務所の職員に聞いた「加給年金が受け取れなくなる人の条件」に困惑【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

加給年金がストップしてしまう…厚生年金加入期間「20年」が重要

年金事務所で手続きをしていると、A夫妻は職員から「配偶者の厚生年金加入期間が20年を超えると、年金受給権が発生したときに加給年金も停止してしまう」と教えてもらいました。

 

勤続年数が20年以上あると、「特別支給の老齢厚生年金」の受給権利が発生。そのタイミングで、加給年金が停止してしまうのです。実際、配偶者の勤務期間が20年になる手前の人は、仕事を続けるかどうか悩むケースが少なくありません。

 

Bさんは現時点で勤続19年。すぐに会社を辞めなければ、加給年金を満額もらえない……ギリギリの状況でこの情報を知ったA夫妻は困惑しました。

2022年に改正!働き続けていると「加給年金」も受給できないことに

なお、配偶者の老齢年金の支給停止については令和4年4月以降に改正となっているため、新しい内容もたしかめておきましょう。

 

たとえば、63歳になっても仕事を続けていて十分な給与がある場合、本来は「特別支給の老齢年金」を受け取れる年齢ですが、在職老齢年金制度で年金給付が全額停止となります。

 

このとき、改正前は「加給年金」が受け取れました。しかし、改正後は年金を受け取っていないにもかかわらず、加給年金も受け取ることができません

 

「加給年金がなくとも、十分な給与があるでしょう」ということなのかもしれませんが、悩ましいところです。

 

とはいえ、「加給年金を受給したい!」とだけ考えて働く年数をセーブしてしまうのも正しい選択ではありません。やりがいや人とのつながりなど、働く喜びにはお金に代えられないものもあります。

 

したがって、年金の給付が始まる前に最新の制度を確認し、その後の働き方については慎重に検討するとよいでしょう。

 

<令和4年4月以降の加給年金の停止と経過措置>

年金制度の改正により、令和4年4月以降は、配偶者の老齢厚生年金(被保険者期間が20年以上または共済組合等の加入期間を除いた期間が40歳(女性の場合は35歳)以降15年から19年以上の場合に限る)、退職共済年金(組合員期間20年以上)を実際に受け取っていなくても、受け取る権利がある場合(在職により支給停止となっている場合等)は、配偶者加給年金額は支給停止されます

(引用:日本年金機構)

 

出典:日本年金機構
[図表3]今回の改正で変更された点 出典:日本年金機構

 

 

梅田 雅美

FP Office株式会社

ファイナンシャルプランナー