FPからの指摘
内閣府『令和4年版少子化社会対策白書』によると、2020年、50歳になった時点で一度も結婚をしたことがない人の割合は、男性28.3%、女性17.8%です。20年前と比べ、3倍以上増えています。自身の収入は、誰に気遣いすることなく、1人で自由に使えますが、なにも考えずに老後を迎えると、老後破産につながる恐れもあります。
65歳となり、年金を受給し始めたAさんは、前段の事件を踏まえ、将来を見据えた生活に見直す必要性を感じました。まずは、おひとりさまで老後を過ごすにあたって準備しておくべきことをあげてみましょう。
・病気やケガによる万一の備えとなる保険に適切に加入する
・自身が動けないときに身の回りことをお願いできる人がいるかどうか
・自己資金が底をつかない対策
・万一の備えとして、エンディングノート/遺言書の作成
・判断能力が欠けたときのための任意後見契約
・亡くなったあとの手続き等の死後委任契約
おひとりさまで頼れる身内がいないとなると、日々の生活はもとより、亡くなったあとのことまで考えておかなければならないのです。
セカンドライフを豊かに過ごすための資金計画
Aさんのセカンドライフを安心・安全・豊かに過ごすために、毎月の収支の洗い出しをしてみます。
まずは65歳時の公的年金額を把握します。Aさんの年金額は次のとおりです。
老齢厚生年金:平均標準報酬月額50万円 504月
差額加算は考慮せず
一般的なところからお話しすると、60代男性の単身世帯の収入は年間330万円(月27万5,000円)です。これが、無職になると、実収入は12万4,710円と低くなります。ですが、消費支出は16万3,781円であるため、月約4万円の赤字となってしまいます。
厚生労働省の2021(令和3)年度厚生年金保険・国民年金事業の概況では厚生年金保険(第1号)老齢年金受給権者状況の推移(男子)から男性の65歳以降の年金額の平均月額は16万9,006円(老齢基礎年金含む)となっており、厚生年金保険に加入していた人は、国民年金(老齢基礎年金)の平均月額5万6,479円に比べると全然違ってきます。
年金の計算は、基礎年金は定額で保険料の納付月数によりますが、厚生年金は加入月数だけでなく、収入も加味されるため、高い報酬で長く働き続けたほうが、将来受け取る年金が増えることがわかります。
また、2022(令和4)年国民生活基礎調査の概況金融資産残高を男女別年齢階級別にみると、60代で男性が1,791万2,000円、女性が1,423万3,000円となっており、無職になると、年金額が少ない人は毎月不足する額を貯蓄で賄っていくことになるでしょう。
Aさんは上記より、月18万円の年金を受け取ることができます。ただし、現役時代は自由に消費してきたため、今後、消費支出を抑えることが必要です。平均的な金額に抑えることができるなら、ある程度は年金で毎月の生活を賄っていくことができます。
貯蓄については、1,900万円を一部NISA等で資産運用し、資産を増やしながら想定外のリスクに備えることも必要です。
まとめ
おひとりさまは、健康で働けるうちは、自由に気遣いない生活を送ることができますが、落とし穴もあります。万一、自身が働けなくなったときの生活保障をひとりで備えておかなければいけません。さらに、手続きをはじめ、実際に自身が動けないときに頼れる人が必要になります。
人生100年時代、特に高齢期では、加齢に伴う認知症の発症のリスクを想定し、亡くなったあとのことまで考えなければなりません。現役世代にはなかなか想像しにくいかもしれませんが、家族がいない分、誰かに依頼することが必要となるため、これを機に専門家に相談等、リスクに備えるための対策を立てることをおすすめします。
三藤 桂子
社会保険労務士法人エニシアFP
代表