結婚が当たり前ではなくなった現代では、生涯独身という人も増えています。多様性の時代となり、人によっていろいろな生き方が尊重されるなか、おひとりさまの老後にはさまざまなリスクがつきもののようで……。本記事では、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が、Aさんの事例とともに、おひとりさまの老後対策で気を付けるべきポイントについて解説します。
〈年金月18万円〉の65歳・独居老人を襲った悲劇…現役時代には気づきにくい「おひとりさま老後」に潜む、まさかの落とし穴【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

月収56万円のおひとりさまの65歳男性、ついに会社人生に幕

IT企業に勤めているAさんは、今年で65歳。Aさんの会社では65歳定年のため、退職後は年金受給にそのままシフトでき、収入が途切れず安心していました。

 

Aさんは20代のころ、当時交際していた相手とのあいだに結婚の話がありましたが、仕事が忙しい時期だったため、すれ違いが続き、結局結婚には至りませんでした。その後は、結婚の機会はやってこず、独身のままでいます。

 

40代のころは、家族持ちも独身も給与から天引きされる社会保険料額が同じことに不公平さを感じていましたが、50歳を過ぎたころからは、独身者は損かもしれませんが、「収入を自由に使える1人のほうが気楽」と、いまでは結婚願望はほぼなくなっています。

 

Aさんの給与は月56万円。社会保険料、税金等を控除したとして手取り額は約42万円。都内にマンションを購入し、60歳で住宅ローンは完済しています。貯蓄は2,000万円。住宅ローンも終わっているし、仕事によって時間に縛られることもなくなるので、いままで以上に悠々自適に生活できると思っていた矢先に事件が……。

 

事件をきっかけに、今後に不安を抱きはじめる

自宅マンションに空き巣に入られたのです。多少持っていた、ブランドのバッグや時計と、常に100万円を現金でおいていたものがそっくり失くなっていました。

 

そしてさらなる悲劇がAさんを襲います。空き巣に入られたことに動揺していたのでしょうか。マウンテンバイクで移動中に横転し、右足首を骨折する大ケガを負ってしまいました。

 

3週間の入院をすることになったAさん。最初の1週間はベッドから降りることができずに途方に暮れていました。独身であるAさんは誰になにを頼んだらいいのかもわからないまま退院となりましたが、このときばかりは、おひとりさまでいることに寂しさを感じました。

 

今回の事件で、これまでの気ままな生活をしてきたことに危機感を覚え、今後のおひとりさまで過ごす老後にあたって、身の回りを見直すためにFPのもとへ相談に向かいました。