定年を待たずして退職し、不労所得で生活する、所謂“FIRE”に憧れている人は多いのではないでしょうか。独立系FPである内田優帆氏の元にも、FIRE志望の20代共働き夫婦が相談に訪れたといいます。2人はiDeCo・NISAをフルに活用して資産形成に励んでいるようですが、仮に毎年4%の利益を得られたとしても20年間で築ける資産は2,000万円ほど。早期リタイアをめざすには少な過ぎる額ですが、家計を見直すだけで、FIRE実現の可能性は高まるといいます。詳しくみていきましょう。
世帯年収1,500万円だが、憧れの〈FIRE〉には程遠い20代・夫婦…“共働き世帯”が抱えがちな家計の問題点【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

お金に縛られない生活を手に入れるためのポイント

冒頭に触れた「4%ルール」で生活を成り立たせるためには、それ相応の投資元本が必要です。この夫婦が仮に、20年後に4,000万円の資産を築いていたとしても、そこから得られる利益は年間160万円ほど。到底、2人で暮らしていくには足りないはずです。

 

勤め人である限り、自身の意思や努力によって急激に収入を増やすことは困難ですから、まずは支出を削り、浮いたお金を投資・貯蓄に回すことから着手すべきでしょう。

 

以下、いますぐ実践すべき家計の見直しポイントをみていきましょう。

 

1. 夫婦の収支を可視化する

まず、夫婦の収入を合算して収支を可視化し、ライフプランを立てましょう。今後、出産や転職、マイホーム購入などライフスタイルが変化することも考えられますが、その時々でプランの見直しができるように準備しておくことが重要です。長期的なライフプランについて相談できる相手をみつけておくことも1つの手です。
2 .先取り貯蓄を習慣づける

無理のない範囲で先取り貯蓄をし、給料が手元に入る前に貯蓄や投資に回すようにしましょう。24年から始まる新NISAのつみたて部分は最大120万円まで投資ができるようになります。つみたてNISAを現在の40万円から120万円に増額すれば20年間の運用で約4,500万円(利回り4%で計算)。夫婦合わせると約9,000万円にもなります。

投資をすれば必ず資産が増える訳ではありませんが、運用期間が長期に及ぶほど、複利の力で資産は増えやすくなります。また利回りが4%以上になったり、余剰資金をさらなる投資・貯蓄に回したりできれば、FIREの実現が近づくでしょう。
3. 幸福度を高める方法について話し合う

収入が多い家庭は支出も増えがちですから、いま一度支出の見直しをしてみる必要もあるでしょう。節約ばかりする必要はありませんが、FIREを達成するためには生活水準を上げ過ぎないことが重要です。限りある資金のなかで生活の幸福度をいかに向上させるか、夫婦でしっかりと話し合っておくべきだといえます。
4. 自己投資を惜しまない

実はもっともリターンが大きい投資が「自己投資」です。ついつい貯金や投資ばかりに目を向けがちですが、若いうちは自己投資も積極的に行いたいところ。具体的には、本を読んだり資格を取ったり……。自己投資の支出が増えたとしても、後で収入が増え、副業などにつながるのであれば有意義な投資となり得ます。

 

今回の相談者のように世帯年収が高く、また年齢も若ければ、早いうちにライフプランを立てて準備することでFIREも十分に可能です。また、完全なFIREではなくとも、労働収入と資産収入を合わせて生活する「サイドFIRE」であれば、より早期に実現できるかもしれません。

 

上に紹介した4つのポイントは、お金に縛られない生活を実現したいすべての世帯に必須の考え方。FIREをめざしている訳ではなくとも役に立つ点はきっとありますから、ぜひ心がけてみましょう。