老後生活のシミュレーションでもっとも大切なこと
試算には必ず「予備費」を加えて
まず、入居を検討する段階での「試算」に問題があったといえる。
好立地の自立型老人ホームは、自由度も高く悠々自適な生活が待っている反面、まとまった一時金と、その後発生する月額利用料金などその分多額のお金がかかる。
長期間の入居を想定のうえ試算する場合、あらかじめ「予備費」を加えて多めに設定することが重要だ。また、子の結婚資金等、想定しうる支出を洗い出すことも忘れてはならない。
場合によっては、年金が受給できる65歳まで週数日でも働き、備えることもできた。運用商品を60歳のタイミングで全額現金化せずとも、一部運用を継続し、運用益を享受することもできただろう。
「生活費は少し多めに考え、生活費以外の支出も洗い出す」のが、大きな買い物をする際のキーワードであることを覚えておきたい。
Aさんに救済策はある?
平均余命を考えると、Aさんが息子へ話したように、もらえる年金の範囲内で生活できる施設へ移ることが賢明だろう。
民間施設のなかでも、一般的に「サービス付き高齢者施設(サ高住)」は、有料老人ホームより費用が安いといわれる。ただ、重度の介護状態になると住み続けられない可能性もあるため、注意が必要だ。また、公的施設のほうが費用は抑えられるが、人気のため入居待ち時間が長い。
ただし、施設を移るとなると高齢での引っ越しとなるため、家族との相談は必須だ。場合によっては専門家に相談のうえ、今後のプランを立て直すことが重要だ。
結局、Aさんは息子の説得により退去を決断。現在は息子の家に住まわせてもらいながら、息子の家に近いエリアで新たな施設を探しているという。
中山 梨沙
FP Office株式会社
ファイナンシャルプランナー