“勝ち組”の会社員であっても、昨今の晩婚化・住宅購入年齢の高齢化によって、現役時代には老後に向けた資産形成が思うように進まない人も多いようです。そこで、多くのサラリーマンが期待をかけるのが「退職金」。しかし、これを頼りに老後の生活を組み立てるのは危険かも知れません。詳しくみていきましょう。
退職金2,000万円出るから大丈夫…年収769万円・大企業サラリーマンの慢心が招く、“悠々自適”とは程遠い老後 (※写真はイメージです/PIXTA)

退職金も充実した大企業だから「老後も安心」という慢心が招く悲劇

サラリーマンとしての勝ち組・負け組の判定基準が「収入」に限られるのであれば、大卒・大企業勤務のサラリーマンは“勝ち組” ということになりそうです。上にみた通り業種・職種による差はありますが、平均よりも多くの給与を得て、年齢を重ねるほど昇給する訳ですから羨ましい限りです。

 

さらに、厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』によると、大企業のうち退職給付制度を採用している企業の割合は90.1%。支給額について日本経済団体連合会『2021年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果』をみてみると、大企業・勤続38年の平均で2,243万円。「老後資金2,000万円不足問題」も一気に解決できる水準です。

 

しかし、手放しで喜んでいられるかというと、そうでもないのが実情です。実は、厚生労働省が5年ごとに行っている『就労条件総合調査』をみてみるとサラリーマンの退職金額は過去四半世紀で1,000万円近く減少しているのです(常用労働者30人以上、中小企業も含む退職金額)。

 

【退職金額の推移】

1998年:2,871万円

2003年:2,499万円

2008年:2,280万円

2013年:1,941万円

2018年:1,983万円

2023年:1,896万円

出所:厚生労働省『就労条件総合調査』より

 

もともと退職金は明らかに減額傾向にありました。しかし、これを把握していないサラリーマンは意外にも多く、実際、「退職金の金額は把握していない(あまり把握していない、全く把握していないの合計)」という人が過半数に上るという調査も(日本FP協会)。

 

結婚や出産、住宅購入など、ライフイベントが高年齢化する傾向にある昨今、定年ギリギリまで教育資金や住宅ローン等の出費が続いて十分な老後資金を貯められず、「退職金だけが頼り」という人が増えています。勤め先が大企業であれば、なお「退職金が出るから、まあ大丈夫か」と余裕をみせる人もいるでしょう。

 

ただ、過去の退職金の推移をみれば、減少傾向にあることは明らか。今後、退職金の支給額が減ることはあっても、大きく増えることは期待できないでしょう。2,000万円超の退職金を受け取れることを前提に老後を設計している勝ち組サラリーマン、定年後に迎えるのは“悠々自適”とは程遠い老後生活かもしれません。

 

退職金はあくまで定年まで頑張った自分へのご褒美。仮に退職金がゼロだったとしても、問題なく生活を維持できるマネープランを組み立て、計画的に老後資産形成を進めておくことが重要です。