分譲マンションの世帯主(一次取得者)の平均年齢は39.9歳。30年前後のローンを利用して夢のマイホームを手に入れる人が多いようです。しかし、そのプランではローン完済時期は70歳。年金生活突入後もしばらく返済が続くことになります。そこで今回は、完済時期の不安を解消するための方策として、「繰上返済」をシミュレーションしてみます。
40歳でマンション購入の会社員、プラン通りなら住宅ローン「月12万円」は70歳まで続くが…〈繰上返済〉で利息額・完済時期はどうなる? (※写真はイメージです/PIXTA)

貯蓄の3割を繰上返済…完済時期はどうなる?

それでは、65歳で完済すべくローンの返済期間を25年に設定した場合、返済プランはどうなるのでしょうか。金利等は上と同条件とすると、利息分は470万2,071円と、30年ローンに比べて100万円近く減額できました。一方、毎月の返済額は13万5,674円と月2万円ほど増えることになります。

 

返済負担率は23.7%と、まだまだ適正な水準には収まっているものの、勤め先の業績悪化による減給・ボーナスカットや、病気・ケガ等による休職等のリスクを考えると、このレートは低ければ低いほど良いのが当然。毎月の返済額を増やしてでも返済期間を短縮することが絶対的な正解とは言えなさそうです。

 

それでは、繰上返済をするとどうなるでしょう。ローンの契約条件は同様とし、5年に1度のペースで繰上返済を行うプランをシミュレーションしてみましょう。

 

総務省の『貯蓄・純貯蓄・負債現在高階級,年間収入階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出 』(2022年)をみると、世帯年収650万~700万円世帯では1ヵ月あたりの貯蓄純増が13万4,173円。貯蓄の3割を繰上返済に充てる場合、1回あたりの返済額は約240万円。このペースで返済すれば、4回目の繰上返済で住宅ローンは完済となります。利息分は369万889円となり、30年返済時に比べて200万円ほどの利息圧縮効果も見込めます。

 

しかし、繰上返済を検討する際に忘れてはならないのが手数料。金融機関によっては手数料がかからないケースもありますが、繰上返済のたびに最大数万円程度の手数料が発生することを考えると、その負担は無視できないものになりますから、注意が必要です。

 

上の返済シミュレーションでは繰上によって返済回数を減らしましたが、回数は元のままで毎月の返済額を減らす方法もあります。諸条件は同様として返済額をみていくと、5年目以降は12万4,552円、10年目以降は11万0,889円、15年目以降は9万1,402円、20年目以降は5万6,092円と確実に減っていきます。

 

サラリーマンとしての給与がピークに達する50代後半では月の返済額は10万円を割っており、老後に向けた資産形成にもラストスパートをかけられそうです。

 

利息額は405万4,172円と、返済回数を減らすパターンと比べれば36万円ほど増えますが、繰上返済なしの30年ローンと比べれば65万円も少なくて済みます。返済回数を減らすよりも、徐々に月の返済負担が軽減していく後者のプランのほうが安心できるという人も多いのではないでしょうか。

 

定年後の不安を軽減するために、返済回数を減らして現役のうちに返済を終えてしまうのか、毎月の返済負担を減らして残したキャッシュで資産形成を同時並行させるのか、選ぶべき方策は人それぞれです。完済が想定される時期の家計状況を勘案し、現役引退後の貯蓄の減少スピードを抑えるための最適なプランを選択することが重要です。