買ってから予想通りに上がった株、あらかじめ「売却する」と決めていた株価まで上昇した株は、利益確定のため売る投資家が多いでしょう。しかし、その「売り」を先延ばしにすれば、より多くの収益をねらうことも可能になるかもしれません。本記事では、株式会社ソーシャルインベストメントの川合一啓氏が、機械的に売り注文を出す前に考えるべきことについて解説します。
株価は「予想通り」に上がったが…“利益確定”の売りを〈先延ばし〉にしたほうが良い場面とは?【株式投資のプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

ポートフォリオ内の業種別バランスにも配慮を

加えて、ある銘柄を売却した後のポートフォリオ内の業種別割合にも配慮が求められます。

 

「分散」は投資の鉄則の1つですが、ポートフォリオ内の銘柄のうち、特定の業種に属する株の割合が高くなり過ぎると、その業種がまとめて下がったときに、大きな損失を被ることになります。業界そのものの前途が怪しくなってきて株価が下がることもありますし、ある銘柄が下げたときにそれに関連する銘柄が一緒になって下げる「連れ安」が起こるケースも想定されます。

 

一方、ポートフォリオ内の銘柄がさまざまな業種の銘柄にバランス良く分散されていれば、特定の業種が下げに見舞われる局面でも、それによるダメージを抑制できます。ある業種が下がったとしても、ほかの業種が上がれば損失を補えるためです。

 

ですから、ある銘柄が含み益となり、利益確定の売り注文を入れようと思ったとき、売った後のポートフォリオにおいて特定の業種の株が占める割合が高くなり過ぎるのであれば、売るのを先延ばしにした方が良い結果を生む場合もあるのです。

 

なお、どうしても売りたい場合には、売却後にポートフォリオの業種別バランスを改善できるほかの銘柄を買うつもりで売るのがよいでしょう。

 

購入時にあらかじめ売値を決め、そこに到達したら機械的に売るという投資行動もたしかに大切です。しかし、上にみてきたように、「現金と株式の比率」「配当の見通し」「ポートフォリオ内の業種別の割合」など、条件次第では利益確定の売りを先延ばしにしたほうが、結果的に大きな利益を生むこともを覚えておくといいでしょう。