父が亡くなり、母は一人暮らし。頻繁に様子を見に行ける距離に住んでいるわけではないし……不安。また母も心細さを感じているなら、「老人ホーム」は有力な選択肢です。ただ「老人ホームに入れば安心」とはいえなくなってきているといいます。果たして、何が起きているのでしょうか。
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慢性的な人手不足。サービスの低下、入居者への虐待…
少々大袈裟かもしれませんが、実際に職員が一気に退職し、サービスの質を保てなくなったという施設は珍しくはありません。介護業界では慢性的な人手不足が深刻化。なかにはサービスの低下により、本来、受けられるはずのサービスが受けられないと問題になっていたり、余裕のない状況のなか入居者への虐待に発展してしまう、最悪のケースも。人手不足からあえて入居者数を制限するという動きもみられ、結果、収益の悪化を招くという事態もあるようです。
介護業界の慢性的な人手不足のひとつの要因といわれているのが給与。厚生労働省『令和4年 賃金構造基本統計調査』によると、医療・福祉施設等介護職員(平均年齢44.2歳)の平均年収は362万円。一方、全職種平均が496.5万円。平均よりも100万円以上も低い給与、さらに肉体的にもきつい……敬遠されるのもムリはありません。
先日、政府が10月末までにまとめる経済対策に、介護職員の賃上げについて盛り込む方針だと明らかになりました。その額は「月6,000円程度」。しかし、この程度では介護業界からの人材流出は止められないという声が多数聞かれます。老人ホームに入っても安心できない……そんな状況は、ますます加速していきそうです。