60歳定年で仕事を辞めることのできる「サラリーマンの勝ち組」…その条件は?
「想定外」を口にするのは、60歳定年間近、独身だとううサラリーマン。定年を迎えても「老後資金の不足」や「無収入となる年金待機期間に対する不安」から、再雇用制度を活用して働き続ける人が7割超といわれるなか、男性は「平均的な人間だけど、定年を迎えたら、スパッと仕事を辞める。準備は完璧」としていました。
定年で仕事を辞められる……自称「平均的」でありながら、サラリーマンの中でも「勝ち組」といって間違いないでしょう。仮に男性が平均的な給与を手にしてきたサラリーマンでありながら、しっかりと資産形成を進めてきた場合を考えみます。
厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』によると、定年前の現在、男性の給与は月収43万円、年収は701万円。60歳定年で手にする退職金は、勤続35年以上だとすると1,700万円くらいになると考えられます。
65歳から手にする年金は、サラリーマン期間が20歳~60歳として、65歳からもらえる厚生年金は月10.3万円。併給の国民年金と合わせると、月16.9万円ほどになります。
次に支出についてみていきましょう。総務省『家計調査 家計収支編』(2022年)によると、60歳以上の単身世帯の平均月支出額は、15万0,409円。また65歳以上では14万9,208円です。
定年後の5年間の支出額は900万円ほど。そして65歳以降、老後が30年続くとなると、5,400万円ほどの支出となり、60歳〜65歳になるまでの支出と合わせて、6,400万円ほどになる計算です。
年金は10〜15%ほど天引きされるといわれていますが、仮に15%とすると、手取りは14.3万円。30年で5,150万円ほどもらえる計算です。退職金も合わせると収支はプラスとなり、定年で仕事を辞めても生活はできる、という見通しが経ちます。
ただそれで「老後不安はゼロ」ではおめでたい話。できれば「退職金は万が一のために」と考え、老後の生活費から除いておくのが望ましいでしょう。
また老後生活、しかも独り身では、年を重ねるごとに家を借りづらくなるというリスクがあります。完璧な老後プランというなら実家暮らしか、住宅購入かつローンも完済済みが理想。そして今後の維持費、バリアフリーへのリフォームなども視野に入れると、1,000万円程度はみておく必要あります。
さらに年を重ねれば、健康リスク、介護リスクが高まります。先進医療など、保険適用外の治療を受けられるよう、備えはしておきたいもの。要介護となり自宅での暮らしが難しくなったら、老人ホームへの入居も視野にはいります。料金はピンキリですが、有料老人ホームであれば、初期費用となる入居一時金は数百万円~1,000万円程度、月額利用料は15万~30万円程度といわれています。
これらも加味し、しかも“備え”も別に用意しておく。そんな完璧な老後プラン、単なる統計資料を用いてそろばんを弾いても「5,000万円プラスαは必要」といったところ。自分を「平均的」と表現しながらも、定年前に「老後の準備は完璧」といえる水準に達するには、相当コツコツと資産形成を進めてきたのか、それとも一発大儲けをしたのか……一般人には少々難しいレベルであることが想像できます。