老後生活の基礎となる公的年金ですが、現在、受け取れる年齢になれば自動的にもらえるようになるわけではありません。「年金の受け取り」は、基本的に申請が必要。しかも、知らなければもらうことすらできない年金制度も。みていきましょう。
年金月14万円のはずだが…「年金120万円のもらい忘れ」で悔し涙の68歳男性「なんで教えてくれないんだ!」 (※写真はイメージです/PIXTA)

時効に注意!「特別支給の老齢厚生年金」の落とし穴

申請しないともらえない日本の年金。普段気に留めてなくても、ちゃんと然るべきタイミングで知らせてくれるので安心です。しかし、何事も絶対ということはないので、年金の受取りが始まる前に案内が届いてないなら問合せをするなど、対応したほうがいいでしょう。

 

また知らせてくれていても、見落としている場合も。

 

ーー(チラシばっかりだなぁ)ポイっ! 

 

と誤って捨ててしまったり、ほかの郵便物に紛れて家の中で紛失してしまったり……よくあるパターンです。無収入で年金の受け取りまで待機中の身であれば、「年金がもらえない=大事件」なので必ず気付くはず。ただ昨今は年金を受け取る年齢になっても「働いている=定期的な収入がある」ケースも多く、年金がなくても生活できているパターンも。そうなると申請への意識が低く、ただ時が過ぎてしまっている、というケースも珍しくありません。

 

ーー申請しないと年金はもらえないなんて……聞いてないよ!

 

そう慌てて飛び出した68歳の男性。年金は65歳から受け取れるはずだったのに、あれから3年、それだけ損をしてしまった……というわけではないのでご安心を。この場合、自動的に「年金の繰下げ受給」となり、受取額は増額。年金の繰下げ受給では、1ヵ月年金の受取りを遅らせるごとに0.7%ずつ増えていくので、68歳なら、65歳での受取額より25.2%~32.9%ほど、年金は増えている可能性があります。

 

ーーなんだ、ラッキー

 

と思うかもしれませんが、知っておきたいのが「年金の時効」。年金の受給権が発生してから5年間放置すると受給権は消滅します(国民年金法第102条第1項・厚生年金保険法第92条第1項)。

 

ーー68歳なら、65歳から3年ほどだから、時効なんて関係ないのでは?

 

と考えるかもしれませんが、「特別支給の老齢厚生年金」はもらい忘れで損をしている可能性も。これは昭和60年の法改正による処置で、男性の場合は「昭和36年4月1日以前の生まれ」、女性の場合「昭和41年4月1日以前の生まれ」など要件をクリアしていることが対象。受給期間は60歳から64歳の間のみという年金制度です。

 

「特別支給の老齢厚生年金」には、「報酬比例部分」と「定額部分」がありますが、男性の場合、昭和24年4月2日~生まれであれば「報酬比例部分」のみ受給。今年68歳、昭和30年生まれであれば、62歳から65歳になるまでの間、「報酬比例部分」がもらえます。現在の平均給与ベースで簡易的に計算すると、年間120万円ほどもらえることになります。

 

年金の時効は5年。68歳の男性であれば、さかのぼって請求できるのは63歳のときまでのもの。120万円ほど「もらい損」がある可能性があるということになります。

 

ーーなんで教えてくれないんだ!

 

年金は「申請し忘れてますよ」と教えてくれるものではありません。「もらい忘れ」の発覚で思わず悔し涙を流すことのないよう、「年金に関するお知らせ」はきちんと目を通し、保管しておくのがベストです。