「パワーカップル」なら憧れの新築・タワマンも射程圏内に
上記の“勝ち組夫婦”が、夫の収入だけでマンションを購入する場合、年収の5倍で借入金の総額は4,265万円まで。毎月の返済額は14万2,000円~17万7,000円、65歳完済とするには返済期間は25年というのが望ましいプランです。上位10%の収入を得ているサラリーマンでさえ、1人の収入では、都内の新築マンションには手が届かないといえそうです。
一方、夫婦の収入を合算して考えてみるとどうでしょう。
2人の年収は、夫853万円、妻685万円で合計1,538万円。その5倍として7,690万円借り入れができそうです。金利は0.5%、元利均等方式で返済期間25年のローンを組んだ場合、毎月の返済額は27万2,741円。返済負担率は21.3%と、余裕のある返済プランといえそうです。マンション価格高騰で騒がれているなかでも、パワーカップルの二馬力なら、8,000万円弱の物件にも手が届くというわけです。
また、条件次第では1億円近い融資を得られることも。1億円あれば「憧れの新築タワーマンション」も射程圏内です。金利や返済期間が上と同条件だった場合、毎月の返済額は35万4,669円。世帯年収に占める返済負担率は27.6%。「適正」な範囲をわずかに上回っているものの、共働きであればなんとかなりそうな水準です。
しかしタワーマンションに暮らす場合、ローンの返済負担率には余裕を持たせたいところ。なぜなら、タワーマンションには一般的なマンションよりも高額なランニングコストがかかるためです。国土交通省『平成30年度マンション総合調査』によると、タワーマンションの平均管理費は通常の分譲マンションの1.4倍にあたる1万5,726円/月。修繕積立金は平均1万2,305円/月とされていますが、タワーマンションの多くは積立金が不足しているとの調査もあり、今後、積立金額が上昇することも十分に考えられます。
上記のランニングコストは織り込み済みだとしても、突然就労不能になって収入が激減するリスクを想定できている人はそう多くないかもしれません。勤め先の業績悪化や病気・ケガなど、収入減となる理由はさまざまですが、ローン返済は待ってくれません。
仮に妻が就労不能になって夫の給与だけで返済を行う場合、年間返済額の420万円は夫の年収の約半分を占め、家計は破綻まっしぐらとなります。
マイホームでの暮らしを長く楽しむポイント
上記のパワーカップルのような高属性の会社員が、金融機関にいわれるがまま“上限いっぱい”のローンを組めば、その分「ローン破産」のリスクは高まります。
毎月の返済に四苦八苦して家庭に余裕がなくなれば、些細なことでぶつかり合いを重ね、離婚のリスクが高まることは想像に難くありません。離婚に至った場合、「住み続ける」か「売却する」のいずれかを選択することになりますが、ローンを一括返済できる金額でマンションが売れるとは限りません。物件価格がローンの残債を下回る「オーバーローン」となっていた場合、差額分を現金で用意しなければ売却ができないことにも注意が必要です。
マイホームという夢を実現した結果、「ローン破産」に至ってしまっては本末転倒です。上記の通り、夫婦どちらか一方の収入で十分に返済できるプランを組むことが、マイホームでの暮らしを長く楽しむポイントといえそうです。