「築浅・好立地」でも入居者に不人気の物件とは
賃貸アパート経営における最大のリスクは、空室が発生した場合に次の入居者が円滑にみつからないことです。非稼働の状態が長引けば長引くほど、当初の見込みよりも収益性が低下してしまいます。
賃貸経営を成功に導くためには、退去者が出てもすぐに空室が埋まりやすい物件を保有することが鉄則。それを考えるうえで、「築浅」や「好立地」といった条件は、空室の長期化を防ぐための強力な武器となるはずです。
しかし、「築浅」でかつ「好立地」でありながら、なぜか入居者に選ばれない物件が存在しているのも事実です。それは一体なぜでしょうか?
入居者にとって、「築浅」が大きな魅力の1つであることは確かですが、管理がいい加減で入口や階段などの共有スペースにゴミが散らばっていたり、メンテナンスが疎かで建物の傷みが早かったりすると敬遠されがちです。築年数が経過していたとしても、手入れが行き届いていて清潔感の漂う近隣物件が選ばれたとしてもおかしくありません。
入居者にとっては、その物件こそが日々の生活を過ごすスペースとなるわけですから、「快適性」が重要であることは間違いありません。建物が古びていないことはその要素の1つにはなれど、決定打とはなりえず、見た目が新しくてもほかに不快なポイントが見つかれば、結局選ばれることはありません。
また、そういった意味では「間取り」や「収納スペース」も重要な条件となります。「築浅」でもかなり窮屈な「間取り」であったり、「収納スペース」が貧弱であったりすると、実際に内覧を行った際に失望される材料となりやすいものです。
「好立地」という条件に潜む“大きな落とし穴”
「好立地」という条件についても、大きな落とし穴が潜んでいます。駅から徒歩30秒の距離に建っていたとしても、さほど賃貸需要が見込めないエリアの場合は空室が容易に埋まらない恐れが出てきます。たとえば単身者をターゲットとしている物件なら、都内の主要なターミナル駅までのアクセスに優れたエリアに人気が集中しています。
アクセスに難があるエリアでは、進学や異動のシーズン以外で空室が発生すると入居者探しに苦労しがちです。現に東京23区内では、2015年ごろから賃貸アパートの空室率が上昇傾向を示しています。2015年1月1日の相続税制改正で課税が強化されたのを踏まえて、税金対策のために賃貸アパート経営に乗り出す人が増えたことがその背景にあります。
他人に貸すと課税評価額が下がることから、もともと所有していた土地にアパートを建てるケースが急増したもの、さほど賃貸需要のないエリアに林立したことから、相次いで空室が発生したわけです。
さらに、賃貸アパート経営に失敗している投資家の多くは、「好立地」という条件を狭義で捉えているケースが多いようです。広義の「立地」においては、「駅まで至近距離にある」といったような移動の利便性以外にも、日当たりや周辺施設の充実、街全体の雰囲気、治安などの条件が含まれてきます。
内覧時に入居希望者がチェックしているのは、物件の外観や内観だけではありません。駅までのアクセスに優れていても、コンビニやスーパー、飲食店、医療機関などといった日常生活に欠かせない施設が見当たらないと、不便で生活しづらいとの結論に達するでしょう。
加えて、「治安が悪い」という印象が強いエリアは、おのずとファミリー層や単身女性に敬遠されてしまいます。多くの層から支持されるような立地条件が整っていない限り、空室がなかなか埋まらない恐れがあるのです。