行かないと融資もおりない? 「現地確認」は必要不可欠
インターネットの不動産ポータルサイトには、膨大な数の収益不動産情報が掲載されています。加えてストリートビューなどを駆使すれば、気になる物件の立体的な外観や周辺の雰囲気なども確認できます。
文明の利器のおかげで、わざわざ現場に出向かなくてもある程度の不動産情報が収集できる時代になっています。
しかし、このようなバーチャル情報のみで高額な不動産の購入を決めてしまって良いものでしょうか。
その答えは「No」です。とくに収益不動産を購入する際は必ず現地へ赴くことをお勧めします。
一昔前は物件を見学せずに購入するケースが多くありました。
地方に住む投資家が都心のワンルームマンションを購入する場合、逆に都心に住む投資家が地方の一棟アパートを購入する場合など、不動産会社の営業担当者から伝えられた情報のみで売買契約書にサインしていたものです。
当然のことながら、現地にいかなければ周辺環境のことはまったくわかりません。
営業担当者から伝えられた情報が正しいかどうかも精査できず、購入価格にそぐわない瑕疵物件を掴まされてしまうようなことも起こり得るのです。
多くの投資家が被害に遭った「かぼちゃの馬車」事件では、評価額5,000万円程度の物件が1億円以上の値付けで売買されていました。事件の被害者らは建設予定地や竣工した建物をみることなく契約させられていたのです。
今後このような被害が再発しないよう、金融機関側は「現地を確認していない不動産購入者には融資をしない」という営業方針に切り替えています。
不動産会社も然り、顧客には契約前に必ず現地を確認するよう促すようになりました。
「マイナスポイント」を徹底的に洗い出す
現地を確認する際のチェックポイントは以下の通りです。
駅から現地までの道のり
まず電車で最寄り駅まで向かいます。駅改札を出て、現地に向かって歩きながら徒歩分数を測ってみましょう。
不動産広告にはよく「●●駅より徒歩●分」などと表記されていますが、これは単純に地図上の道路距離を80m=徒歩1分として計算したもので、実際に歩いてみると表記通りの時間では到着できないこともあります。
まっすぐでフラットな道のりならそれほど誤差はありませんが、途中に上り坂があったり、長い信号待ちを避けるために歩道橋を利用しなければならないなどの通行障害に阻まれたりすれば、所要時間は伸びるでしょう。
加えて道中に階段があれば自転車利用も制限されるため、最寄り駅との距離感はさらに遠い印象になります。
こういったミクロ情報は、現地に行かなければ収集できないものです。
近隣の嫌悪施設
次に、隣接地や周辺に怪しい施設がないかどうかを確認します。たとえば駅から現地までの道沿いに風俗系の店舗があったら女性の入居は期待できないでしょう。
その他、町工場やガソリンスタンド、墓地など、性別を問わず嫌われる施設のチェックもしておくと良いでしょう。
投資家自身が現地で感じることは、入居者が感じることと同じです。
「駅まで行きづらくて不便だな」とか、「この場所の前を通るのは嫌だな」と感じたのなら、それは入居客付けに苦労する兆しです。
室内の状態が良ければ一旦は入居してくれることはあったとしても、更新してくれることはないでしょう。不便や嫌なところがあれば誰でも「引っ越したい」と思うものです。
この感覚には、現地を訪れてみない限り気づけません。
建物の管理状況
敷地内や共用部がキレイに掃除されているか、ゴミ置場が整然としているかなど建物管理面も一応チェックします。
しかし管理が行き届いていないからといって購入を断念する必要はありません。こうした問題は、管理会社を切り替えれば解決できるためです。立地条件が良いのに建物が汚いため空室が続いているような物件であれば、価格交渉もしやすくなります。
現地調査で意識すべきは「マイナスポイントの洗い出し」です。
この物件を購入するかしないかという判断だけでなく、購入を前提とした賃貸需要の絞り込み、物件力向上のアイデア出しにも有効に活用できます。