(写真はイメージです/PIXTA)

築年数を重ね、所々に老朽化がみられ始めた賃貸物件。オーナーには「売却」「リフォーム・リノベーション」「新築への建て替え」の3つから、いずれかの選択肢を選び取ることが求められます。それぞれの選択肢に一長一短があり、絶対的な正解は存在しません。オーナーの投資意向や物件の立地・間取り・築年数等によって、ベストなチョイスは異なります。本稿では、株式会社LandSitz代表の船橋寛之氏が、“築古感”の漂い始めた賃貸物件をどう扱うべきか、3つの対応策について解説します。

所有するアパートが築古になると生じる“不都合”とは?

賃貸アパートを新築した直後は外観・内観ともにピカピカで、設備も最新のものがそろっていることから、よほど立地が悪くない限りは満室状態が続き、家賃も強気に設定できることでしょう。

 

しかし、歳月を経て建物・設備の老朽化が進み、周辺物件と比べて“築古感”が漂い始めると、だんだんと空室が発生し、次の入居者がみつからないケースが増えてきます。また、外観の傷みや設備の故障も目立ち始め、修繕・修理などといった維持管理コストの負担も重くなりがちです。

 

そのタイミングで家賃の引き下げを断行すれば、「収入減&コスト増」のダブルパンチで収益性が大幅に低下しかねません。

 

見切りをつけて物件を処分しようにも、築年数が経過して資産価値が低下した賃貸物件は、なかなか希望通りの価格では売却できないものです。運良く売却できたとしても、買い叩かれてしまう可能性が高いでしょう。

収益性が低下した築古アパート…3つの選択肢

では、収益性が低下した築古アパートはどうすればよいのでしょうか?

 

主な選択肢は、①売却する、②リフォーム・リノベーションを行う、③新築に建て替える……の3つです。

 

まず、売却してしまえば空室の悩みから解放されますし、その後は維持管理コストもかかりません。しかしながら、先述したように築古物件が建ったままの状態では安く手放すことになる可能性が高いでしょう。

 

これに対し、リフォーム・リノベーションや建て替えによってバリューアップを図れば、再び入居者を獲得しやすくなり、家賃も相対的に高めに設定できます。ただし、再び入居者を集められるようになるほどのリノベーションには相応の投資が求められますし、その資金をすべて回収するには長い時間を要します。

 

リフォーム・リノベーションにとどめるべきか、それとも建て替えて新築の状態から再スタートするべきかを判断する目安になるのが、「法定耐用年数」の考え方です。これは国税庁が定めているもので、その建物が大規模修繕工事などを行わない状態でどれだけの年数にわたって使用し続けられるのかを示しています。

 

木造アパートが22年、鉄骨造アパート(鉄骨の厚みが3mm超4mm以下)が27年と定められていますが、あくまでこれは「建築費を経費として減価償却できる年数」。それを過ぎたからといって、物件を貸し出せなくなる訳ではありません。

 

きちんとメンテナンスを施し、安全性などに問題がなければ、「法定耐用年数」を超えていても賃貸経営を続けられます。

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※本記事は、「不動産業界から『あなた』を守ります」をコンセプトに株式会社LandSitzが運営する『不動産投資の裏側を知る教科書』のコラムより、一部編集のうえ転載したものです。