9割近いサラリーマンが60歳以降も働くが、年収は「激減」
サラリーマンの多くが、「60歳」と「65歳」というタイミングで大幅な収入減を経験することになります。
まずは60歳の定年時。厚生労働省『高年齢者雇用状況等報告』によると、21年6月~22年5月に定年を迎えたサラリーマン37万9,120人のうち、そのタイミングで「退職」を選択した人はわずかに12.7%。実に9割近くのサラリーマンが、「60歳以降も働く」という選択をしていることがわかります。
ただ、定年以降は雇用形態が契約社員や嘱託社員となるため、多くの場合、収入が減ることになります。
たとえば中小企業で部長を務めていたサラリーマンであれば、60歳直前で月収(所定内給与額)は54万5,000円、年収814万3,600円*。60歳を機に「役職なし」となれば、月収は29万2,500円、年収で424万4,200円と、収入は半分近くにまで減ってしまいます。
*厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』大卒・男性、従業員10~99人事業所の平均値より。以降の金額はすべて同調査より
次に収入が激減するのは、公的年金の受給が始まる65歳。このタイミングで、嘱託社員・契約社員の仕事からの引退を決断する人も多いでしょう。
40代前半で係長に昇進した際、年収は515万8,600万円から565万900円と50万円ほど昇給。続いて係長から課長に昇進で年収660万6,100円となって、さらに100万円近くアップ。課長から部長への昇進でさらに100万円ほど昇給して年収は775万5,000円。給与水準がピークを迎える50代後半の部長は、年収800万円を超え、平社員だった40代前半から約300万円の年収増を達成しました。
しかし、上にみた通り60歳の定年を機に給与はおよそ半分になり、また65歳で現役を退いて年金生活に突入すると、収入はさらに減少します。国民年金は40年間保険料を納めていれば満額受給できるというシンプルな仕組みですが、問題なのは、会社員や公務員が上乗せでもらう厚生年金。老齢厚生年金は、基本的に以下の計算式で算出できます。
平均標準報酬月額(≒平均月収)×7.125/1000×2003年3月までの加入月数
②加入期間2003年4月以降
平均標準報酬額(≒平均月収+賞与)×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数
便宜上②のみで計算すると、元・中小企業部長だったこの男性が受け取れる年金は、国民年金と厚生年金を合わせて月17万円ほど。現役引退直前の月収は約30万円ですから、60歳定年時に続いて収入がまた半分近くに減ってしまうことになります。妻が専業主婦だった場合、受け取れる国民年金は満額で月6万4,000円ほど。夫婦の年金は合計280万円程度となり、嘱託社員時代からさらに140万円ほど世帯年収が減少することになります。