60歳から65歳の5年間で年収は4分の1に…現役のうちから生活の“サイズダウン”を
上記の元・中小企業部長は60歳から65歳までの5年間で月収は54万円→17万円と3分の1程度に、年収は814万円→204万円と4分の1程度に減少してしまいました。
総務省の『家計調査』によると、世帯主の収入が月50万~54万9,999円の世帯の月あたりの消費支出は37万1,734円。
この感覚のまま60歳定年を迎えれば毎月6万円ほどの赤字が発生し、65歳で現役を引退するまでの5年間で360万円もの貯蓄を取り崩すことになります。65歳以降は配偶者が受け取る年金を足しても世帯収入はさらに減少しますから、部長時代の感覚で老後を迎えると、あっという間に家計が悪化することは明白です。
とはいえ、収入減に直面してから急に節約生活への転換を図るのは困難です。「節約」と聞いて真っ先に思い浮かべるのは食費や交際費などのいわゆる「変動費」の削減でしょうが、これは得策とはいえません。食べたいものを控え、夫婦での旅行などの楽しみを我慢する生活は長続きせず、「こんなのムリ!」と早々に挫折してしまう可能性が高いためです。
そこで、定年前の50代のうちから「お金の管理」と「固定費の削減」のための準備を始めておくことが重要です。
①お金の管理
現役時代、十分な収入を得ていた頃は詳細な管理をせずとも、生活を営めたでしょう。しかし、収入が大きく減少する老後はそうもいきません。収入と支出を細かく記録して節約できる部分を洗い出し、老後の収入状況に見合った生活へとシフトしていくことがポイントになります。
②固定費の削減
年金生活に突入する65歳時点では、子は独立し、夫婦2人暮らしという世帯は多いはずです。大きい家はその分維持費も嵩むため、2人で暮らすのに十分なサイズの家への住み替えを検討してみましょう。ただ、住み替えにかかるコストが大事な貯蓄を圧迫してしまっては本末転倒ですから、慎重なプランニングが求められます。
また、電車やバスなどの公共交通機関が発達している地域に暮らしているのであれば自家用車を手放すことを検討するべきかもしれません。保険や車検、重量税に駐車場代と、車を保有しているだけで自動的に発生するコストを削れれば、かなりの節約効果を実感できるでしょう。
現役時代に平均以上の収入があった人でも、老後は高い確率でかなりの収入減に直面します。想定外に長生きする可能性もありますから、老後に向けた生活のサイズダウンは必須。とはいえ、急激なライフスタイルの見直しには苦痛が伴いますから、時間をかけてゆっくりと準備しておくことが重要なのです。