安定感のある大企業か、裁量の大きい中小企業か…。就職活動における会社選びの選択肢はさまざまですが、仕事の内容を重視して「あえて」中小企業を選択する人は少なくありません。最近では、「給与・福利厚生」を理由に中小企業を選ぶ人も増えており、大企業並みの待遇を用意している中小企業もない訳ではありませんが、平均値をみる限り、中小と大企業との差は歴然です。詳しくみていきましょう。
1億円あったら何ができたかな…60歳の元・中小企業サラリーマン、大企業・勝ち組同期との〈生涯賃金格差〉に苦笑い (写真はイメージです/PIXTA)

中小企業と大企業…ピーク時には年収差300万円超

安定した給与や充実の福利厚生が魅力の大企業か、早くからコアメンバーとなり大きな裁量を持って仕事ができる中小企業か……就職先としてどんな企業を選ぶのかは、40年先、50年先の生活にも影響を及ぼす、大きな分かれ道となります。

 

日本の会社の99%は中小企業ですが、就職先として人気なのは大企業。やはり安定性を重視して、就職活動を行う学生が多いようです。一方、チャレンジングな環境での自己成長を求めて中小企業を、とくに社歴の浅いベンチャー企業を「あえて選ぶ」学生も少なくないようです。

 

東京商工会議所が行った『2019年度中堅・中小企業の新入社員の意識調査』によれば、中小企業を選んだ理由でもっとも多かったのが「仕事の内容がおもしろそう」(42.6%)。2番目以降には「職場の雰囲気が良かった」(39.8%)、「自分の能力・個性が活かせる」(35.5%)と続きました。また、4番目には「待遇(給与・福利厚生等)が良い」(25.3%)がランクイン。中小といえども、待遇の良い企業が少なくないことがうかがえます。

 

とはいえ、あくまで平均値をみる限りは、大企業と中小企業の間には明確な給与差があるというのが事実。統計をみていきましょう。

 

厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』で中小企業(従業員10~99人)勤務の大卒・男性サラリーマン(正社員)の平均給与をみてみると、大学を卒業して間もない20代前半では月収22万7,600円、年収は318万5,400円。一方で、従業員1,000人以上の大企業勤務のサラリーマンは月収が24万1,400円、年収が369万9,800円。すでに年収に50万円ほどの差があります。ただ、この時点ではまだ「格差」を実感するほどではないかもしれません。

 

しかし、大学を卒業して10年。30代になった中小企業勤務のサラリーマンの給与は、月収29万7,200円、年収で459万2,000円。入社時からは年収が150万円近く上昇していますが、同じ頃、大企業勤務のサラリーマンは月収35万600円、年収は630万5,000円。入社間もなくの頃は50万円程度だった差は、10年間で170万円強に。「年間賞与その他特別給与額」の項目をみると、中小企業が73万2,800円であるのに対し、大企業では138万1,400円と、2倍近い差が付いていることがわかります。

 

さらに10年後、40代になると中小企業サラリーマンの月収は37万3,900円、年収で571万9,000円。30代前半から年収100万円増で順調に昇給しているようですが、大企業サラリーマンの月収は46万2,900円、年収は809万1,600円。年収差は実に237万2,600円。その後、給与水準がピークを迎える50代になると、中小企業では年収651万6,000円(50代後半)、大企業では年収988万700円(50代前半)と年収の差は300万円以上に拡大します。