(※画像はイメージです/PIXTA)

同居する人がいない「おひとりさま」が亡くなった場合、遺産があれば相続の問題が発生します。しかし、親族と折り合いが悪い、疎遠である等の理由で、親族に遺産を相続させたくないというケースも考えられます。そのような場合、事前にどのような手段をとっておけばよいのでしょうか。相続に詳しいダーウィン法律事務所共同代表の野俣智裕弁護士が解説します。

「信託」利用のメリット・デメリット

対策3. 信託を利用する

昨今、「民事信託」や「家族信託」という言葉を耳にする機会が増えてきました。

 

民事信託とは、一定の目的に従って財産管理等をしてもらうべく、自分の財産を信頼できる人に信じて託す仕組みのことです。

 

民事信託は、財産を託された人(「受託者」といいます)が自分のために財産を使うのではなく、財産を託した人のために財産を使う形で設定されることがほとんどです。

 

高齢者が認知症対策のために信託を設定する場合には、受託者はその人の身近な家族である場合が多いため、世間的には「家族信託」という呼称も広まっています。しかし、法的には必ずしも受託者が家族である必要はありません。

 

ご自身の身近に、信頼することが出来て、将来的にはその人に自分の財産を渡したいと思うような関係性の人がいれば、その人を受託者として民事信託の契約を締結することも可能です。

 

そして、民事信託は、生前の財産管理と死後の財産承継の両方のために使える仕組みです。

 

本人が生きている間は、本人の財産を適切に管理運用して本人の生活を守り、本人が亡くなった場合には特定の人に残った財産を承継させることができるため、生前の認知症対策を兼ねる形にもできます。

 

また、葬儀やお墓のことについてお願いする「死後事務委任契約」というものがありますが、このような内容も信託契約書の中に盛り込んでしまうことも少なくありません。

 

信託では、受託者に預ける財産を設定時に決めておき、信託が継続中は受託者が関与し続けるため、遺言のように、発見されずに実現されない、というような心配は基本的にはありません。

 

信託では受託者を務めてくれる人を見つける必要がありますので、適任の人を見つけることができなければ、利用ができないという点が、難しい部分かもしれません。

 

弁護士等の専門家であっても、受託者については信託業法上の規制があるため、現在は対応していない場合がほとんどです。ただし、弁護士が遺言における遺言執行者を務めることや、受託者の監督をする立ち位置の信託監督人等に就任することはできます。

3.まとめ

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

生涯を通して結婚されない方も増えてきており、また、結婚しても離婚や死別等によっておひとりさまになるケースも少なくありません。

 

これに伴い、疎遠な親族の相続人よりも、身近な人に感謝の気持ちとして財産を渡したいという願いを持たれる方が増えるのも自然なことだと思います。

 

これまで見てきた通り、この願いを実現するためには事前に対策が必要になります。まだ自分がしっかりしていて動けるうちでなければ難しい対策もありますし、一度とった対策を練り直すこともできますから、思い立ったときに行動に移すことが大切でしょう。

 

気になることがありましたら、ぜひ一度、相続に詳しい弁護士にご相談してみてください。

 

 

野俣 智裕

弁護士法人ダーウィン法律事務所 共同代表

弁護士

 

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本記事は、株式会社クレディセゾンが運営する『セゾンのくらし大研究』のコラムより、一部編集のうえ転載したものです。