(※画像はイメージです/PIXTA)

同居する人がいない「おひとりさま」が亡くなった場合、遺産があれば相続の問題が発生します。しかし、親族と折り合いが悪い、疎遠である等の理由で、親族に遺産を相続させたくないというケースも考えられます。そのような場合、事前にどのような手段をとっておけばよいのでしょうか。相続に詳しいダーウィン法律事務所共同代表の野俣智裕弁護士が解説します。

2.おひとりさまが親族に遺産を渡したくない場合にとりうる方法

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このように、人が亡くなった場合には、その人に同居の家族がいなくても、基本的には自分の親族の誰かが法定相続人になり、その親族に財産が渡ることになります。

 

関係性が良くない親族や、長らく疎遠になっている親族に自分の財産を渡したくない場合にはどうすれば良いでしょうか。その場合には、何らかの対策が必要になります。そこで、主な対策を3つご紹介します。

 

対策1. 遺言を作成しておく

もっとも一般的な対策としては、遺言を作成しておくという方法が考えられます。

 

遺言を作成することで、遺産を誰に渡すのかについて自分で決めることができます。関係性の良くない親族に財産を渡すくらいであれば、生前にお世話になった人や、自分がお世話になった施設を運営する法人に財産を残したいというような場合、遺言を作成しておくべきです。

 

ただし、この対策をとる場合に、念頭に置いておくべきことがあります。おひとりさまに特有の問題が2つありますので、ご留意ください。

 

第一に、特におひとりさまの場合に顕著ですが、遺言の内容が実現されないリスクがあります。

 

遺言は、その遺言が発見され、さらには実現されて初めて意味のあるものです。遺言が発見されずに、あるいは、発見されても発見者がその遺言をなかったことにしてしまって、本来財産を渡したくなかった法定相続人が遺産を受領してしまっては元も子もありません。

 

そこで、自分が亡くなったタイミングで、遺言の内容を実現してくれる「遺言執行者」を選任しておくことが有効です。また、遺言執行者が相続開始時期(本人が亡くなったこと)を知ってもらえるように、定期的なやり取りを行うなどの必要があるでしょう。

 

加えて、遺言を毀棄したり隠匿したりすることが難しい形式で作成しておくことが推奨されるでしょう。特に有効なのが、「公正証書遺言」を作成して公証役場で保管される方法をとることです。

 

第二に、遺留分への配慮です。

 

遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人が、相続について法律上取得することを保証されている財産の一定の割合であって、遺言等の処分によっても奪われることのないものを指します。

 

要するに、遺言等で対策をしたとしても奪うことのできない相続人の最低限度の相続分のようなものです。

 

遺産を渡したくない親族が兄弟姉妹(または甥姪)ではない場合には、遺言によって財産を受け取った人が、後に遺留分を主張する相続人から「遺留分侵害額請求」を受ける可能性があります。このことを想定して、あらかじめ遺留分に配慮した遺言にしておくべきか、遺言で財産を受け取ることになる人と事前に打ち合わせをしておくべきか、など、詰めておかなければならない点があります。

 

対策2. 推定相続人の廃除

遺留分の話と関連して、遺留分を有する推定相続人(将来相続人になるはずの人)に非行や虐待・侮辱などがある場合に、その相続人の相続資格をはく奪する民法上の制度があります。これを「推定相続人の廃除」といいます。

 

この制度は誰にでも適用できるわけではなく、あくまでも、推定相続人に廃除事由がある場合に限られます。

 

廃除事由には3つの類型があり、1つ目は被相続人に対する「虐待」があった場合、2つ目は「重大な侮辱」があった場合、3つ目は「著しい非行」があった場合です。

 

廃除の方法としては大きく分けて2つあり、「生前廃除」と「遺言廃除」があります。生前廃除は、まだ自分が生きているうちに、家庭裁判所に審判を申し立てるものです。他方、遺言廃除は、遺言の効力が生じた後に、遺言執行者が家庭裁判所に申し立てるものです。

 

廃除事由があるかどうかは微妙な判断になることがありますし、裁判所が絡む手続ですので、ご自身のケースで廃除を行うべきかどうかや、細かい手続きについては、個別に弁護士にご相談いただくのが良いと思います。

 

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本記事は、株式会社クレディセゾンが運営する『セゾンのくらし大研究』のコラムより、一部編集のうえ転載したものです。