結婚に対する価値観は多様化しており、いまや男性のおよそ3人に1人が「一生独身」です。収入の安定した正社員であれば、老後は年金だけでも生活していける見込みですが、不安なのは介護や孤独死のリスク。未婚男性は、配偶者のいる男性に比べて平均寿命が短いという統計がありますが、だからといって、「老後の備え」が不要な訳ではありません。詳しくみていきましょう。
「年金17万円」でギリギリ暮らしていけそうだが…“生涯独身”を決めた48歳・サラリーマン、〈最悪の老後〉を想像して震える (※写真はイメージです/PIXTA)

男性の平均寿命は「82歳」だが、「未婚男性」に限定すると…?

老後に頭をもたげてくる不安。「老人ホーム」が解決策の1つになるかもしれません。

 

ここでいう「老人ホーム」とは介護不要の高齢者が入居する自立型老人ホーム。イメージとしては高齢者限定のサービスアパートメントに近く、食事等の提供も受けられます。要介護になったときは退去しなければなりませんが、多くの場合、連携する施設があるためスムーズに移転可能です。

 

気になるコストはピンキリですが、入居金は0~数億円、月額費用は10万~40万円といったところ。一般的な老人ホームに比べれば高めではあるものの、「頼れる人がいない」「孤独死したらどうしよう」など、単身高齢者が抱える不安を解消できると考えれば、安いものかもしれません。

 

「将来は老人ホームもアリだな」と、入居費用を用意するために奮闘する、独身サラリーマン。しかし、その貯蓄が「ムダ」になってしまう可能性もありそうです。

 

その理由は未婚男性の平均寿命。厚生労働省『人口動態調査』(2021年)によれば、男性の寿命の中央値は82歳ですが、配偶関係別にみると「配偶者あり」82歳であるのに対し、「配偶者なし」はなんと67歳。つまり、統計をみる限り「単身者の半数は70歳を迎えることなく死んでしまう」というのが現実なのです。

 

「配偶者なし」の男性の死因をみていくと、「悪性新生物(ガン)」で23.1%で最多。「配偶者あり」の男性もガンによる死亡が最多で、しかも未婚男性よりも10ポイント以上も高くなっていますが、これは一般的に高齢になるほどガンの罹患率が上がるため。上にみた通り、有配偶者のほうが長生きするので必然的にガンで亡くなる人の割合が高まるのです。

 

一方、未婚男性の死因で有配偶者よりも多いのが「自殺」。未婚男性の死因の6.8%を占め、有配偶者よりも5ポイント以上も高くなっています。理由はさまざまでしょうが、単身者のほうがそうした状況に追い込まれやすいというのは紛れもない事実といえそうです。

 

統計上、いくら未婚男性が70歳前に亡くなるケースが多いとはいっても「80歳、100歳まで生きることはないから、老後の備えは不要」と考えるのは早計です。十分な貯蓄を持たず年金生活に突入し、生活苦に陥って自ら命を絶つ……そんな悲しい最期を迎えないために、計画的な資産形成を行い、老後の不安の種をつぶしておくことが重要といえそうです。