もし高齢の親が認知症になったら……介護負担は重く、家族全員が総倒れということも考えられます。そうならないためにも「老人ホーム」への入居は有力な選択肢といえるでしょう。その際にひとつ覚えておきたいのは、認知症ならではのトラブルです。みていきましょう。
お前が盗んだんだろ!年金14万円〈認知症〉の80代母「老人ホーム」で繰り広げた大乱闘 (※写真はイメージです/PIXTA)

認知症の親(80代)を介護する子(50代)…認知症×在宅介護の実態

高齢化に伴い、家族が認知症になったらと不安に思う人が増えています。実際に認知症の家族を介護する生活とは、どのようなものなのでしょうか。日本認知症官民協議会『認知症のご家族への調査』で、その実情をみていきましょう。

 

まず認知症となった家族は、男性平均79.9歳、女性平均82.0歳。アルツハイマー型認知症が圧倒的に多く、半数を占めています。現在の介護度(調査回答者による自己申告)は、最多が「要介護2」で20.7%。「要介護3」が20.1%、「要介護1」が18.6%、「要介護4」10.2%と続きます。

 

また認知症と診断された時期で最も多いのが「5年以上前」で22.6%。「1~2年未満」が18.8%、「2~3年未満」が17.6%、「3~4年未満」12.2%と続きます。

 

一方、介護する家族についてみていくと、週1回1時間以上介護している家族は「2人」が最も多く、42.9%。一方で「1人」は25.8%。認知症患者との関係で最も多いのが「子ども・子どもの配偶者/パートナー」で83%を占めています。また介護者の年齢は男性が58.5歳、女性が58.5歳でした。

 

認知症を患っている80代の親を、60代手前の子どもが介護する……このようなケースがよく見られるパターンのようです。

 

では実際にどれくらいの時間を介護に当てているのかみていくと、「要介護1」で1週間当たり18.1時間。「要介護2」で22.1時間、「要介護3」で25.5時間、「要介護4」で27.7時間、「要介護5」で29.1時間。最も多い「要介護2」で1日当たり3時間程度、介護に時間を割いています。

 

要介護2までは、コミュニケーション(話し相手)や通院、買い物の同行・付き添いなどに時間をかけていますが、要介護3以上になると、食事や身支度・着替え、屋内の移動、排泄など、日常生活のサポートに重点がおかれる傾向にあります。

 

また要介護度が上がるにつ入れて、負担を軽減する保険適用外のサービスを利用する割合は増えていき、その支出は、要介護1で月平均1万4,213円、要介護2で1万7,727円、要介護3で2万3,093円となっています。しかし、さらに要介護度が上がると減少。要介護4で1万9,497円、要介護5で2万1,501円。要介護3をピークに、保険適用外のサービスで生活の質を上げよう……そんな余裕もなくなるということでしょうか。

 

さらに介護者が不安に感じる介護としては、自立度が低い段階では付き添いや同行が最多で、ほか排泄や入浴と続きますが、自立が難しくなっていくと「認知症状への対応」が急増。また排泄への不安も急激に増え、認知症の進行が介護者の生活にも大きな影響を及ぼしていることが分かります。