老後の生活の基盤となる公的年金。しかし、実際に受け取っている年金額は少なく、「生活保護」を利用する高齢者が多いのが実情。しかし「生活保護」に関しては、決して風当たりが良いとはいえません。なぜなのでしょうか。
今日はパチンコに行っちゃおう!「年金月5万円以下」で高齢者困窮も「生活保護費でフィーバーする」一部の高齢者に困惑 (※写真はイメージです/PIXTA)

生活保護を受ける高齢者…お金があると、つい

支給される年金は月5万円未満で、預貯金もない……そうなると高齢者といえど、生きていくためには働くしか方法はありません。しかし、年齢と共に身体は不自由となり、働くことも難しいという状況に。

 

働けず、お金もない……そうなると、生活保護が視野に入ります。

 

厚生労働省『被保護者調査(令和5年7月分概数)』によると、生活保護世帯は165万0,492世帯、人数にして202万0,692人でした。なかでも多いのが「高齢者世帯」で91万0,913世帯。全体の55%を占めます。

 

仮に東京都23区に住む75歳の男性の一人暮らしだと、最低生活費(生活扶助基準額)は7万1,900円、住宅扶助基準額は5万3,700円、合計の生活保護費は12万5,600円。また青森県の市街地以外の地域では、最低生活費は6万1,560円、住宅扶助基準額が3万円で合計の生活保護費は9万1,560円になります。

 

年金月5万円であれば生活保護費の差額、東京都23区で月7.5万円、青森県市街地以外で月4万円ほどを受給できる可能性があります。

 

なんとか、最低水準の生活を約束する生活保護。ただ、受給者に対しての風当たりは決して良いものばかりではありません。

 

ーー今日は偶数月の15日だから、お年寄りでいっぱいだ

 

ーー今日は5日だから、お年寄りでいっぱいだ

 

何のことかといえば、パチンコ店で働く店員のつぶやき。偶数月の15日は年金の振込日だから、朝から高齢者が並ぶといいます。では5日は? これは生活保護費の振込日。生活保護費の支給日は、担当の福祉事務所により異なりますが、月初、1~5日のいずれかの日にちです。どのような立場であれ、ファンはお金が手に入ると「今日はパチンコに行っちゃおう」とうずいてしまうようです。

 

 

このような状況に対し、当然というべきか「生活保護を受けておきながら、パチンコなんてけしからん!」と怒りの声が後を絶ちません。しかし生活保護は日本国憲法第25条1項で「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」によるもの。文化的な最低限度なので、娯楽も許されています。映画を観に行くのも、漫画本を買うのもOK。パチンコだけでなく、競馬も競輪も競艇も生活保護費を使っても問題ありません。

 

もちろん限度はあるので、ケースワーカーが訪問時に生活指導を行います。またギャンブルに勝てば収入とみなされ、ケースワーカーに申告しなければなりません。生活保護者がギャンブルで勝ってもあまり意味はないのです。

 

生活保護費は元をたどれば税金ですから、生活保護費でパチンコしている人たちを糾弾したい気持ちは分かりますが、あくまでも娯楽の範囲。とはいえ限度を超える人たちによって、生活保護のイメージが悪くなり、困惑。支援を受けたくても躊躇する人がいるのも事実です。生活保護は、困窮する人たちにとって最後のセーフティーネット。もし「これって、やり過ぎでは……」と感じる場面に遭遇した時は、福祉事務所に一報を入れるのが正解です。