賃金水準が横ばいを続けるなか、自力で給与アップをめざせる方法の1つである「転職」。人によっては転職で年収が2倍、3倍になったというケースもあるようです。しかし実際には、転職者の4割超が給与ダウンの憂き目にあっており、なかには「3割減」という人も。転職に踏み切る理由や、転職前後の給与事情について、詳しくみていきましょう。
あと数年、我慢すればよかった…年収850万円の50代・大卒サラリーマン、定年目前に“力試し”の転職も〈大後悔の給与額〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

50代の転職者…10人に1人が「給与3割減」

とくに給与減の影響を大きく受けているのは、50代の転職者。転職で「給与が減った」とする人の割合を年代別に比べてみると、20~40代は3割台であるのに対して50代では5割前後となり、給与の減少幅が「3割」に上ったという人の割合も、50代前半がもっとも高くなっています。

 

【年齢別「転職で給与減」の割合】

20~24歳:33.2%/7.3%

25~29歳:33.0%/10.4%

30~34歳:32.8%/12.7%

35~39歳:37.7%/13.0%

40~44歳:37.4%/9.9%

45~49歳:32.5%/7.5%

50~54歳:53.2%/18.2%

55~59歳:49.9%/11.8%

 

出所:厚生労働省『令和2年 転職者実態調査』より

※数値左:転職者全体に対する「給与減」の割合、右:転職者全体に対する「給与3割減」の割合

 

サラリーマンにとって50代といえば、それまでの会社員人生でも給与がもっとも高くなる時期です。

 

たとえば大卒・男性サラリーマン(正社員)の給与水準をみていくと、20代前半の大学卒業直後に月収23万5,800円、残業代・ボーナスを含む推定年収が348万円ほどだった給与水準は、年齢を重ねるとともに上昇し、ピーク時の50代後半では、月収52万5,700円、推定年収は857万円に達します。

 

30年超にわたる会社員生活を経て、20代のころ2倍以上の給与を手にするようになった50代サラリーマン。このタイミングで転職に踏み切る10人に1人が、「給与3割減」を覚悟しなければならないのです。単純計算では、年収857万円→599万円。大卒・正社員でいえば30代前半と同等の水準です。

 

50代といえば定年も目前。老後に向けた資産形成にも、ラストスパートを仕掛けたいタイミングだという人が大半のはずです。そこで年収250万円減となれば、「あと数年我慢すればよかった」と後悔する人も多いでしょう。

 

サラリーマンとしての集大成となる50代の時期、若いころから挑戦したかった職種の求人をみつければ、「自分の力を試してみたい」と考えるかもしれません。しかし、50代の転職には相応の経験やスキルが求められますし、まったくの異業種への挑戦となれば大幅な給与減も覚悟しておく必要があります。

 

定年に向けて現在の職場で守りに入るのか、はたまた「給与減もやむなし」と新たなチャレンジに踏み切るのかは、お財布との相談の末、慎重に判断したいところです。