夫婦間で年齢が大きく離れた「年の差婚」をした場合、特に老後の資金計画は入念に練る必要があります。なぜなら、住宅・教育・老後という「人生の三大支出」が近いタイミングでまとめてやってくるからです。本記事ではAさん夫婦の事例とともに、年の差婚におけるライフプランニングの注意点について解説します。
年収700万円の56歳夫と30歳パート妻がバツイチ同士で再婚も、老後に暗雲…「年の差婚夫婦」に迫る破産の足音に戦々恐々【CFPの回答】 (※写真はイメージです/PIXTA)

結婚歴があると年金が減る?夫は「年金分割」で年金が減る可能性も

厚生年金には「年金分割」という制度があります。婚姻期間中の財産は共有のものという扱いとするため、厚生年金についても年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を当事者間で分割することができます。

 

婚姻期間中、お互いに働いているのであれば、それぞれの給与を按分しお互いに2分の1となるように調整しますが、相手が第3号被保険者(専業主婦など)であった場合は相手に2分の1を渡すことになります。

 

夫の前妻との婚姻期間は10年間で、前妻は専業主婦だったため、10年分の厚生年金記録の1/2を前妻へ分割することとなります。計算したところ、夫はこの年金分割により、厚生年金が更に月1万円減ることになりました。年金分割の請求期限は2年間です。離婚後2年を経過すると請求することはできません。

 

Aさんはこの制度の存在を知らず、前夫との年金分割を行っておらず、すでに離婚から2年を経過していたため、年金分割を行うことはできませんでした。

人生の三大支出が近いタイミングでやってくる「年の差婚」

年の差婚によくみられるケースは、Aさん夫妻のように人生の三大支出といわれる「住宅」「教育」「老後」のための費用が近いタイミングでやってくるということです。

 

Aさんの夫を例にすると、

 

1.65歳時点で住宅ローンがあと10年
2.Aさんのお子様の中学・高校・大学の教育費
3.定年退職に伴い年金生活となり、収入の減少

 

この3つが同じタイミングとなります。Aさん夫妻は、

 

・教育資金と老後資金の準備額の目標を立て、目標に向けて毎月積み立てを行う
・夫死亡時の支出減少分を、生命保険に加入して補う
・貯蓄を銀行預金だけにせず、積立NISAなどを活用し効率的に運用する

 

まずこの3つから取りかかることにしました。幸い、Aさん夫婦にはある程度の貯蓄と退職金が見込めるため教育費については問題なく工面できそうですが、もしも貯蓄も退職金もない状態だった場合には、早急に資金計画を立てる必要がありました。

 

「大きなお金を使うタイミングが重なってしまうんですね……」とAさん。

 

現在は、育児に支障のない範囲で夫の扶養内でパート勤務をしていますが、お子様の手が離れたら今後のためにも収入を増やしていきたいとのことです。

 

 

 

伊藤 貴徳

伊藤FPオフィス

代表