新築マンションの世帯主(一次取得者)の平均年齢は39.9歳。期間30年・3,600万円の住宅ローンを利用して、マイホームを取得する人が多いようです。しかし、その平均的なプランではローンの完済時期は70歳。現役を引退し、年金生活突入後も、返済が続くことになります。今回は、安定収入のある現役時代のうちに「繰上返済」を利用するシミュレーションを行います。
年収700万円の40歳・会社員、「30年ローン」で新築マンション購入…5年に1度〈130万円の繰上返済〉で“完済時期”はどうなる? (※写真はイメージです/PIXTA)

回数を減らすか、期間を短縮するか…2パターンの「繰上返済」

このように考えると、40歳で30年ローンを組むことには慎重になるべきといえそうです。

 

では65歳で完済できるよう、25年ローンを組んだとすると、返済プランはどうなるのでしょうか。上と同条件で考えると、利息分は230万4,196円と50万円弱の減額。一方で月々の返済は12万7,681円と月2万円ほど上昇し、世帯年収に占めるローン返済負担率は18%から21%と3ポイントほど高まります。

 

期間を短縮しても返済負担率は適正な水準に収まってはいますが、60歳からの5年間は現役時代に比べて収入が大きく減るか、完全に途絶える人もいるでしょうから、まだまだ不安は残ります。そこで、繰上返済を選択してみるとどうなるでしょう。借入条件は上記のシミュレーションと同様とし、5年に1度、繰上返済をするとします。

 

総務省の『貯蓄・純貯蓄・負債現在高階級,年間収入階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出 』(23年1~3月)をみると、世帯年収750万~800万円世帯では1ヵ月あたりの貯蓄純増が7万3,331円。貯蓄の金額の3割を繰上返済にまわすことを想定すると、1回あたりの返済額は130万円ほど。そうすると、完済となるのは21年後。利息分は201万5,058円となり、30年返済時に比べて30万円ほど減る計算になります。

 

上記は繰上返済で返済回数を減らすシミュレーションですが、繰上返済には月々の返済額を減らしていくパターンもあります。諸々の条件等は前出の通りに返済額を変えていくと、5年目以降は12万1,987円、10年目以降は11万4,490円、15年目以降は10万3,381円、そして60歳を迎える20年目以降は8万1,438円と最終的に10万円を大きく割り込む水準になります。

 

利息額は213万8,591円と、回数を減らしたパターンと比較して12万円ほど高くなりますが、繰上返済を行わない30年ローンと比べれば60万円超の利息圧縮効果が期待できます。回数が変わる返済プランに比べて現役引退後の月の返済負担を軽減できるため、「こちらのほうが安心」という人もいるでしょう。

 

ただ、繰上返済を検討する際に考えなければならないのが手数料。そのコストは金融機関によって異なりますが、返済のたびに手数料が発生するようだと、その負担は無視できない水準になります。繰上返済を検討する際には、こうしたコストにも注意が必要です。

 

年金生活に突入後の貯蓄の減少スピードを抑制するために、返済の回数を減らすのか、月々の返済負担を徐々に減らしながら、老後の資産形成に回す資金を確保できるようにするのか、繰上返済を行う際、選択すべきプランは人それぞれです。

 

ただ1ついえることは、大半のサラリーマン世帯は60歳以降は収入が激減するということ。住宅ローンの返済負担による老後破産を避けるため、安定収入のある現役時代のうちに、返済と貯蓄を同時に行えるプランを検討することが重要です。