人生の最大の買い物であるマイホーム。大半の人が住宅ローンを利用していますが、その商品性やリスクについて「実は、あまりよく分かっていない」という人が半数近くに上ります。平均30年超に及ぶ住宅ローン返済。期間中に起こり得る金利変動のリスクを理解していないと、将来、大変な苦労を強いられることになるかもしれません。詳しくみていきましょう。
家賃と同じ負担なら、家買うか…住宅ローン返済「月9万5,000円」に“超余裕”のはずの年収750万円・会社員、陥り得る〈最悪の事態〉 (写真はイメージです/PIXTA)

金利や自身の収入は、住宅ローン返済期間中に必ず変動する

「毎月の家賃と同じくらいの負担感なら、家買うか」と、思い切って購入するマイホーム。数千万円の買い物ですから、“現金一括”という人は珍しく、大半が住宅ローンを利用します。

 

ただ、ローンの利用者がその商品性について正しく理解しているかというと、実態はそうでもないようです。

 

住宅金融支援機構『住宅ローン利用者の実態調査』(2023年4月調査)によると、変動型・固定期間選択型、いずれの金利タイプ利用者も、住宅ローンの商品特性や金利リスクについて「理解しているか少し不安」「よく理解していない」「まったく理解していない」の合計が半数近くに上っているのです。

 

変動金利を選択している利用者について細かくみていくと、「適用金利や返済額の見直しのルール」への理解に対しては40.6%、「将来の金利上昇によって返済額がどれくらい増えるか」に対しては46.5%、「金利タイプが異なる住宅ローンと比較した際の特徴」に対しては44.3%、「優遇金利の適用ルール」に対しては47.9%、「将来の金利上昇に伴う返済額増加への対応策」に対しては49.7%が、完全には理解していないという状況です。

 

昨今の超低金利にひかれて、金融機関にいわれるがまま、リスクについてよく理解もせずにローンを組んでいるという人も多いということでしょう。直近、固定金利は上昇傾向にあるものの、金融機関同士の住宅ローンの利用者獲得競争は激しく、変動金利は大きくは上がらないだろうというのが大方の見方です。

 

とはいえ、住宅ローンの返済は平均30年超。未来永劫、金利が上がらないと考えるのは現実的ではありません。

 

仮に金利0.5%で3,200万円・30年間の住宅ローンを組んだとすると、当初の返済額は月9万5,740円。戸建て住宅の一次取得者の平均像である世帯主の年収750万円という世帯なら、年収に占める返済負担率は15%程度であり、「超余裕」の水準といえます。

 

ところが、たとえば金利が1%上がると、月の返済額は11万438円となり、負担は1万5,000円ほど増加します。また金利が2%上がれば毎月の返済額はさらに1万6,000円ほど増加。そうなったとしても、年収750万円をキープしていれば十分に耐えられるかもしれませんが、ローン金利はそれ以上に上昇していくことも考えられますし、勤め先の業績悪化・倒産等によって、収入が大幅に減ったり、完全に途絶えたりするリスクもあるでしょう。

 

いずれにしても、これ以上、下がることはないほど金利水準の低い日本。現時点で、年収の20~25%とされる「適正」な返済負担率のギリギリを攻めるようなローンを組むのは、キケンです。実際に大幅な金利上昇が起こり、返済不能となれば、せっかくのマイホームを手放さなければならないかもしれません。

 

改めて、住宅ローン返済が数十年にわたる戦いであり、その間に金利や自身の収入が「変わらない」ことはあり得ないと認識する必要があるでしょう。破産に陥り、自宅は競売に……そんな最悪の事態に備え、毎月の返済をしつつ同時に貯蓄も行っていけるような、ゆとりのあるプランを模索することが重要です。