(※画像はイメージです/PIXTA)

多様化が進むなかで、日本人の未婚率は上昇し続けています。今年で67歳になるAさんもそのひとりです。1,000万円も貯蓄があれば大丈夫だろうと考えていたAさんですが、67歳になってその見通しが甘かったことに気づきます。単身世帯ほど気が付きにくい落とし穴。Aさんは老後に向けて何をしておくべきだったのでしょうか? CFPの伊藤貴徳氏が解説します。

老後から始められる備え

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65歳以降も働いて、生活できる水準の収入を得ることができるのであれば、「年金の受給繰下げ」を検討しましょう。

 

受給の繰下げとは、公的年金の受け取りを先送りにすることで、そのあいだの分の年金額を増額してくれる仕組みです。年金を65歳で受け取らず66歳以降75歳まで繰り下げることができます。繰り下げると1ヵ月ごとに0.7%増額となり、最大10年で84%の増額をすることができます。

 

たとえばAさんの場合、65歳時点で15万円の年金の受給を10年間繰り下げたとすると、10年後から受け取る年金額は27万6,000円になります。もちろん、繰下げ期間中は年金を受け取ることはできません。

 

また、Aさんのようにすでに年金を受給している方は繰り下げをすることはできません。今後の働き方や、将来受け取りたい年金額に合わせてうまく活用することが大切です。

 

繰下げ受給で広がる選択肢

たとえば3年間繰下げ受給をすると、25.2%の増額が見込めます。15万円の年金が18万7,800円になるということです。

 

現在の生活費が18万円で今後も同じ暮らし方をするとし、年金額が15万円の場合、

 

・これからも、生活費の一部として毎月3万円分の仕事を続ける

・定年後も働き、年金を3年間繰り下げることで、定年4年目からは繰下げ受給の年金で生活費を賄うことができる

 

という選択肢を作ることができます。年金の繰り下げ受給制度を活用することにより、セカンドライフの選択肢の幅も広がるでしょう。

収入を増やすか、減らすか

(※画像はイメージです/PIXTA)
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働くことを選んだAさん

上記を踏まえ、Aさんは「働くことで収入を増やす」という選択肢をとりました。現在は、現役時代に培った経理の知識をもとにパート勤務することで、給料を生活費の一部に充てています。

 

収支の改善策は、大きくわけて「収入を増やす」「支出を減らす」の2つがありますが、極端な支出の削減は、生活の質を下げる原因にもなるため、適切なバランスが大切です。

 

Aさんは年金をすでに受給しているため、年金の繰り下げ受給はできません。可能な限り働くことで今後の生活費を貯める方針を取ることにしました。

 

「65歳の定年後、だいぶゆっくりさせてもらいましたし、こうやってまた社会のお役に立ちながら生活するのも、いいですね」とAさん。仕事仲間も増え、さらにセカンドライフの充実度が増しているようにもみえました。

 

まとめ

Aさんにこれまでの経緯を聞くと、「結婚や転職など、変化を感じる機会が少なく、プランニングの見直しのきっかけが少なかった」「仕事や日々の生活で、いまを生きることに一生懸命だったため、将来についてしっかりと考える機会を作らなかった」「将来の収入(年金)がいくらになるのかわからないまま、先送りにして過ごしてきた」とおっしゃいます。

 

その話し方からも、一生懸命に自分の道を進み、人生を歩んでいたことが窺い知ることができます。単身世帯の方は、家族あり世帯と比べるとライフステージの変化を感じる機会が少ないということは考えられます。

 

受け取れる年金額や利用できる制度、将来のための資産形成のための準備方法など、必要だと思う情報を積極的に収集していただき、将来の豊かな暮らしのための基盤を築いていただきたいと思います。

 

 

伊藤 貴徳

伊藤FPオフィス 

代表

 

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本記事は、株式会社クレディセゾンが運営する『セゾンのくらし大研究』のコラムより、一部編集のうえ転載したものです。