21年、労働基準法違反による送検件数は311件。長すぎる労働時間や少なすぎる賃金……こうした労働条件・労働環境を強いる「ブラック企業」はあまた存在しています。声高に働き方改革が叫ばれているものの、ネット上では「うち、ブラックかも」という書き込みが止むことはありません。その実情を詳しくみていきます。
あれ、東の空が明るい…残業100時間超〈ブラック企業〉勤務の26歳、“驚愕の”手取り額に「オレは毎日何をやってるんだろう」 (※写真はイメージです/PIXTA)

正社員の給料を「時給換算」してみると

——終電で帰れれば良いほう。こんなに働きまくって手取り20万円って、どゆこと?
 

SNSにそんな投稿をしたのは、都内のIT企業に勤める26歳の会社員・Iさん。

 

大学卒業後、バックパッカーとして東南アジアを放浪し、帰国後もフリーターとして数年過ごしたことで「新卒カード」を失ってしまい、やっとの思いで入社できたのがいまの会社だといいます。毎月の残業時間は80時間超。繁忙期は優に100時間を超え、オフィスで朝を迎えることも。過去の投稿では「生命力には自信がある」としていたIさんも、直近では「あれ、東の空が明るい。オレは毎日何をやってるんだろう……」と呟き、さすがに心身にダメージを蓄積させているようです。

 

厚生労働省は、ホームページで「最低賃金以上かどうかを確認する方法」を解説しており、説明によると月給制の場合は「月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)」としています。

 

東京都では最低賃金を現在1,072円(23年10月からは1,113円)としており、通勤手当や時間外手当を除外した賃金がこれを下回っていれば、労働基準法違反。40歳未満のIさんの場合、手取り20万円なら額面は24万円ほどと推測されます。上記の計算では残業代を除外しますので、仮に基本給15万円、職務手当2万円とすると、17万円÷176時間(月の労働時間)で時給換算965円。最低賃金を大きく下回る水準で働いていることがわかります。

 

このように給与を時給換算してみると、実は最低賃金未満で働いていたという正社員は少なくないかもしれません。

 

試しに計算をしてみて気になる点があれば、勇気を持って企業側に説明を求める姿勢が重要です。それでも是正されない場合、企業はその事実を認識しながら違法な労働をさせていた可能性も。そうなると、「労基に駆け込む」という選択肢を取らざるを得ないでしょう。