2040年半ば、受け取れる年金額が「2割」目減りする?
そもそも「2,000万円不足」の根拠となっているのが、総務省による『家計調査』。「市場ワーキング・グループ」が参考にした、2017年の高齢夫婦無職世帯の数値をみると、赤字額は毎月5万円ほどになっています。仮に30年間夫婦で生きるなら年金とは別に2,000万円ほどの貯蓄が必要になる、という計算です。
ただこの家計調査の数値は年度によって異なります。ともに65歳無職夫婦の数値をみてみると、直近の2022年は毎月約2万2,000円の赤字。単純計算では、約800万円の貯蓄があれば30年間の老後を過ごしていくことが可能といえそうです。
■2022年
実収入:24万6,237円(うち公的年金21万9,762円)
消費支出:23万6,696円
非消費支出:3万1,812円
黒字額:▲2万2,271円
黒字額2:▲4万8,746万円
■2017年
実収入:20万7,913円(うち公的年金19万1,974円)
消費支出:23万2,541円
非消費支出:2万7,493円
黒字額:▲5万2,120円
黒字額2:▲6万8,060円
※出所:総務省『家計調査』
※「黒字額2」は収入が公的年金だけと仮定した場合の黒字額
なお、上記のシミュレーションは、夫は会社員、妻は専業主婦という世帯を想定したもの。共働きであれば年金額が増えますから、老後に求められる貯蓄額は変わってきます。
現役時代、ともに平均給与を受け取っていた共働き夫婦の場合、厚生年金部分の受取額は夫が約10万3,000円、妻が約7万4,000円。国民年金を満額受給できるとすると、夫婦で月31万円ほどの年金を手にすることなり、毎月4万円強の黒字になる計算です。これなら、「年金だけで生活できる」といえそうです。
ただ、これはあくまでも統計上の平均値で算出したもの。未来永劫、現在と同水準の年金額が支払われる保証はどこにもありませんし、実際、2040年半ばころには年金が2割目減りするとする政府の試算もあります。つまり、元・共働き夫婦で31万円の年金を受け取っている世帯の手取り額が、現状の29万円から23万円台になるということ。
収入が年金のみに限られる場合、想定より6万円近くも手取り額が減ってしまえば大打撃。現在と同じ水準の生活を続けていればコンスタントに赤字が発生することになりますから、年金を受け取りながら悠々自適の老後生活を思い描いていた世帯は、唖然としてしまうことでしょう。
「うちは夫婦共働きで頑張ってきたから」と、年金だけで暮らしていけるのは現役時代に平均的な給与を受け取り続けてきた「現在の」年金受給世帯の話。いまの40~50歳代、それよりも若い世代は、将来に向けての物価上昇や年金の目減りを念頭に置き、自助努力による資産形成を進めていくことが不可欠といえそうです。