結婚年齢と子をもうける年齢が上昇し、それに伴って住宅購入のタイミングも後ずれしています。40歳時点で30年前後のローンを組んでマイホームを取得する、というのが平均像とされますが、60歳の現役引退時点で1,000万円超の残債がある場合、退職金を返済に充てるのは賢い選択といえるでしょうか。受け取れる年金額と老後の生活費をシミュレーションしていきます。
引退後、「月10万円」の返済はキビシイ…退職金で〈住宅ローン完済〉の60歳・元大卒サラリーマン、年金だけで生活できるのか? (※写真はイメージです/PIXTA)

住宅購入のタイミングは後ずれし、定年退職時に「1,000万円超」の残債

初婚年齢と子をもうける年齢の上昇が続いています。内閣府が公表したところよると、1975年の平均初婚年齢は、男性27歳・女性24.7歳でした。2000年には男性28.8歳・女性27.0歳に上昇し、2020年では男性31歳・女性29.4歳となっています。第一子出生時の母の年齢も、1975年に25.7歳だったのが2000年には28.0歳となり、2020年は30.7歳となりました。

 

このように、ライフステージの年齢が上がっていることに伴って、住宅購入のタイミングも後ずれしていっています。

 

国土交通省の調べによれば、21年に新築マンションを購入した世帯主(一次取得者)の平均年齢は39.9歳で、借入金額の平均は3,610万円、返済期間は平均29.7年。40歳の世帯主が予定通り30年間でローンを返済していくとすると、完済時の年齢は70歳です。

 

上記の平均通り3,610万円を金利0.5%・元利均等方式で借り入れた場合、60歳の定年退職時になお1,200万円超のローンが残ることに。月10万円ほどの返済負担は、年金生活に突入した後のことを考えると不安です。

 

そこで、会社員が期待をかけるのが「退職金」。

 

退職金は各企業が就業規則に定める福利厚生であり、支給が法律で義務付けられているものではありません。それでも、中央労働委員会『令和3年賃金事情等総合調査(確報)』によれば、「退職金がある(退職一時金制度がある)企業」は89.7%。およそ9割のサラリーマンが定年退職時に一括で、あるいは何年かに分割して退職金を受け取るとされています。

 

受け取る退職金の金額は、勤続38年の大卒サラリーマン(総合職)が2,243万3,000円、勤続42年の高卒サラリーマン(総合職)が1,953万円(日本経済団体連合会『2021年9月度退職金・年金に関する実態調査』より)とされています。

 

【大卒総合職の標準退職金】
23歳(勤続1年):25万9,000円
25歳(勤続3年):64万7,000円
27歳(勤続5年):116万9,000円
32歳(勤続10年):288万6,000円
37歳(勤続15年):519万8,000円
42歳(勤続20年):822万3,000円
47歳(勤続25年):1,209万円
52歳(勤続30年):1,649万1,000円
55歳(勤続33年):1,931万8,000円
57歳(勤続35年):2,085万8,000円
60歳(勤続38年):2,243万3,000円

【高卒総合職の標準退職金】
19歳(勤続1年):17万1,000円
21歳(勤続3年):43万1,000円
23歳(勤続5年):78万7,000円
28歳(勤続10年):184万1,000円
33歳(勤続15年):347万4,000円
38歳(勤続20年):556万5,000円
43歳(勤続25年):838万円
48歳(勤続30年):1,162万7,000円
53歳(勤続35年):1,542万5,000円
55歳(勤続37年):1,708万8,000円
57歳(勤続39年):1,836万7,000円
60歳(勤続42年):1,953万円


出所:一般社団法人日本経済団体連合会『2021年9月度退職金・年金に関する実態調査』より
※数値:会社都合の場合の退職金額(退職金一時金のみ、退職一時金と年金併用、退職年金のみの場合の額を合算し、単純平均したもの)