「億超え」が当たり前の都心のタワーマンション。その立地の良さから、一般的な収入の世帯が低層階の物件を購入する例も珍しくありません。とくに属性の高い公務員に対しては、金融機関も前のめりになって融資をしてくれることから、平均的な年収の世帯が1億円超の物件を購入するケースは少なくないようですが、元国家公務員の4割が定年退職後に「お金の悩み」を抱えているとの調査もあり、ギリギリのプランでローンを組むのは考えものといえそうです。詳しくみていきます。
どうやりくりしても、常に赤字…月給41万円・公務員夫婦「ローン通ったから」と“1億円タワマン”購入も、定年後は〈生活苦〉の必然 (※写真はイメージです/PIXTA)

会社員に比べて“断然”ローン審査に通りやすい公務員

もちろん、公務員であっても、クレジットカードなどの滞納履歴があったり、健康面に問題があったりすれば審査に落ちることも十分に考えられます。しかし、「限りなく低い失業リスク」「安定した収入」「退職金の支給が法律で規定されている」と三拍子揃った公務員は、会社員に比べて断然ローン審査に通りやすいのは事実です。

 

人事院『令和3年国家公務員給与等実態調査』によると、国家公務員(行政事務)の平均給与は月41万3,064円(平均年齢42.5歳)。国土交通省の調査によると、マンション購入者の平均年齢は40歳前後ですから、ちょうどこの平均値と同じくらいの給与水準であると考えられます。

 

銀行も、「公務員」と聞けば融資に前のめりになるでしょうから、夫婦で協力して返済すれば、1億円超えのタワーマンションも無理ではなさそうです。ただ、公務員だからといって、将来の安泰が約束されたわけではありません。

 

人事院が一般職国家公務員の60歳定年退職者に聞いた『令和2年度 退職公務員生活状況調査』によると、60歳定年退職者のうち、「毎月のやりくりに苦労しており、時々赤字が出る」が22.6%、「どうやりくりしても常に赤字が出て生活が苦しい」が17.9%と、60歳定年退職後に4割の人が生活苦を感じていることがわかっています。

 

また「今後の生活で気になること、不安に思うこと」について聞くと、「自身の健康」や「家族の健康や介護」についてともに7割超の人が「不安」と回答。定年退職者の最大の関心事が「健康」であることが分かりますが、一方で3番目には「日常の生活費やローンの返済といった家計に関すること」がランクインしています。

 

国家公務員というエリートでさえも、老後のお金についての不安は絶えることはないのです。

 

予期せぬ失業や給与減の不安は少なく、さらにはある程度の退職金も約束されている……会社員からすれば羨ましい限りの好待遇で働く国家公務員であっても、収入が年金のみに限られる老後は、苦労を強いられるようです。「ローン審査に通ったから」と、身の丈に合わない「高級タワマン」を買ってしまえば、ほぼ間違いなく、老後の生活苦に苛まれることになるでしょう。