フリーランスとして働く52歳の伊藤一郎さん(仮名)。老後に備え、毎月10万円の積立投資を始めました。資産は順調に推移していましたが、“コロナショック”による相場の大変動に慌て、大きな損失を出す結果に…。「後悔の念が絶えません」と振り返る伊藤さん、どうすればこの失敗を避けられたのでしょうか。本稿では、テクニカル分析の解説サイト『テクニカルブック』を運営する株式会社アドバンの代表取締役・田中勇輝氏が、積立投資を行う際に押さえておきたいポイントについて解説します。
あのとき、もう少し我慢していれば…52歳・Web系フリーランス男性、“安全”がウリの〈積立投資〉で大失敗&大後悔のワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

安全なはずの積立投資で大失敗..絶えることのない後悔の念

Web業界で活躍する52歳の伊藤一郎さん(仮名)。会社員よりも老後に受け取れる年金が少ないフリーランスということもあり、40歳頃から資産形成の必要性を意識し始めました。

 

そして5年前、各国の株式に連動するインデックス型の投資信託を月額10万円のペースで買い始めました。

 

伊藤さんは、「いきなり月額10万円は、少し頑張りすぎだったかもしれません。でも2年ぐらいは順調で、資産も安定して増えていきましたよ」と振り返ります。2年が経過した頃には、資産評価額は300万円を超えていたようです。

 

ただ、ここから予想もしない展開が起こります。新型コロナウイルス感染症の拡大が始まったのです。

 

雲行きが怪しいと感じた伊藤さんは、2020年に入ってから積立を中断します。多少の下落は覚悟していましたが、世界的なパニックへと発展していく中で相場は暴落し、資産評価額は100万円近く下落。「こういう場面に慣れていなくて、どうすればいいか分からなかった」と語る伊藤さんは、なんとすべての投資信託を解約してしまったのです。

 

ところが、伊藤さんが解約した途端、市場の暴落は収まり、驚くほど早いスピードで株価が回復していくことになります。チャンスがあれば買い戻そうと考えていたそうですが、解約した金額よりも高いところで買い戻す気になれず、結局その後はなにもできませんでした。

 

現在でも、伊藤さんが解約してしまった投資信託の基準価額は上昇しているそうです。

 

「もしあのとき我慢して持ち続けていれば、資産を大きく増やすことができていたはず」

 

機会損失のことを考えると後悔の念が絶えません。積立投資で大きな失敗を経験した伊藤さんは、どこで判断を誤っていたのでしょうか。