私的年金制度のひとつであるiDeCoは、毎月の掛金が全額所得控除されるほか、運用中の利息・運用益は非課税、受取時も税制優遇があるなど、将来に向けた資産形成の「心強い味方」です。しかし、注意点も含めてよく理解せず、安易に加入してしまうと、家計を圧迫する危険性があると、FP Office株式会社の志村哲司FPはいいます。具体的な事例を交えて詳しくみていきましょう。
同僚もやっているし…世帯年収655万円の30代夫婦〈iDeCo〉きっかけで「家計崩壊」のワケ【FP が警告】 (※写真はイメージです/PIXTA)

Aさん一家に訪れた“いくつかの転機”

転機1.Aさん妻が子育てのためパートを休職

最初の転機は、妻が子育てのためパートに出られなくなり、毎月8万円の収入ダウン。

 

世帯の手取り月収は28万円へと下がってしまったが、月間支出の27万円は辛うじてカバーしており赤字転落は免れていた。これはもともと想定内であり、産後半年後には0歳時保育に預け、妻はパート勤務を再開する予定としていた。

 

しかし、次に起こった転機はまったくの想定外だった。

 

転機2.子育てのストレスで…Aさん妻が「育児うつ」に

妻が産後しばらく経った頃、「育児うつ」と診断されたのだ。この日を境に、あきらかに家事や育児に支障が生じ始めた。また、前向きで生真面目な性格であった妻にマイナスな発言が増え、ちょっとしたことで口論になることが多くなった。

 

こんな時、夫婦どちらかの両親に家事の手伝いを頼むことができればどんなに助かることだろう。しかし、Aさん夫妻は2人とも地方出身者であり、遠方に住む両親に家に来てもらうことは困難だった。

 

いろいろ悩んだ結果、夫は職場の上司と相談のうえ、育児休業を取得することに。育児休業前には28万円あった夫の手取り月収は、22万円へとダウンした。

 

この時点で、家計収支は赤字へと転落。さらに妻の通院費や、生活費の増加(Aさんが慣れない家事を上手くこなせず、食費や日用品費が大幅に増えた)など、手取月収22万円に対して支出は32万円を超えていた。

 

ここでもし十分な生活防衛資金(預貯金等)があれば、蓄えを取り崩しながら当面の家計を維持することも可能であった。しかし、住宅購入~出産と出費が続いたことから、Aさんの預金残高はほぼ底をついていたのだ。

 

月末のクレジットカード請求の支払いが困難になり、ついには不足分をカードローンで補うという事態に陥ってしまう。毎月「借金を借金で返す」という悪循環は、Aさんの精神状態を沈み込ませるには十分なものであった。